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熱海・伊豆山に現実科学の実験空間「ハコスコカフェ」 廃屋を再生して活用

「ハコスコ」の藤井直敬社長と太田良恵子取締役

「ハコスコ」の藤井直敬社長と太田良恵子取締役

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 熱海の伊豆山に実験スペース「ハコスコカフェ」(熱海市伊豆山)が6月1日、オープンした。経営は、VR(バーチャルリアリティー)サービスの開発などを手掛ける「ハコスコ」(東京都渋谷区)。

アーティスト中谷健一さんの作品「グリッチタヌキ」

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 伊豆山の「マジオドライビングスクール熱海校」の前に位置する同スペース。現時点で飲食物を提供するカフェとしては営業せず、最新デジタル技術の実験や展示、イベント開催、レンタルスペースとして活用し、予約客のみ受け入れる。開業に先立ち、5月からは最新のテクノロジーアートの祭典「Media Ambition Tokyo 2021」の熱海会場で利用した。

 同社の藤井直敬社長と妻の太田良恵子取締役は、数年前に伊豆山に移住。医学博士・脳科学者でもある藤井さんは、脳科学を応用して体験をデジタル化する技術を事業化する中で、近所にあった廃屋に注目した。「当初はカフェとして一般客も受け入れることを想定していた。開業までの仮説と検証の結果、一般的なカフェ営業はせず、再生をテーマにした最新テクノロジーの実験と体験のスペースに位置付けた」と言う。

 外観は、菅沼商店という日用品店だった築40年の建物の姿をそのまま残した。傷みが激しかった内装のみをリニューアルし、「地域で愛されていた商店を再生」した。内装は、同社が開発するダンボール製VRスコープ「ハコスコ」から採用し、ダンボール風の集積材「MDF」を敷き詰めた。ホームページでは、同スペースが完成するまでの経緯を写真やイラスト、動画などで紹介する。最新のVR技術を使い、同スペースの改装前と後を3Dカメラで撮影した映像で見ることができるようにもしている。

 同店のある伊豆山の七尾地区は、地理的条件を生かして、昔からダイコン栽培とたくあんの製造が盛んな地域。農家など古くからの集落と、相模湾を一望できる高台のロケーションが特徴のリゾートマンションや別荘とが混在するエリアでもある。伊豆山の七尾地区という、一見すると最新テクノロジーとは無縁な場所ではあるが、「そこに再生の実験をする価値がある」と強調する。太田良さんは「時間や空間を越えての体験を提供する実験スペース。テーマとしている『リモートリアリティー』を開発する余地がある」と説明する。

 すでに同スペースでは、さまざまな「実験」が始まっている。「Media Ambition Tokyo 2021」の会期中、視覚・聴覚・嗅覚の認知プロセスへの介入実験として、「千里顔」というリモートリアリティー作品を展示し、参加者が体験できるようにした。6月13日まで、SNSで話題となった作品「グリッチタヌキ」などを手掛けるアーティスト中谷健一さんと中谷アロさんの「親子個展」を開いており、特殊なカメラを装着した観覧者の目線で、中谷さんらが遠隔で作品の解説をする試みも行われている。

 今後について、藤井さんは「熱海は昭和のレトロさを売りに観光が盛ん。ハコスコカフェの取り組みが、別レイヤーでの集客のトライアルとして役割を担うことができれば」と期待を込める。太田良さんは「現在、地域の事業者と、アートとテクノロジーの企画を進めている。リモートリアリティーをテーマに、地域や企業と面白い取り組みをしていきたい」と意欲を見せる。

 イベントやスペースレンタルの予約はホームページで受け付ける。

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