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熱海・伊豆山の鮮魚店「魚久」がネット販売 地域に愛される店、営業再開へ前進

伊豆山の鮮魚店「魚久」の高橋一平さんと母・和子さん

伊豆山の鮮魚店「魚久」の高橋一平さんと母・和子さん

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 熱海の鮮魚店「魚久」(熱海市伊豆山、TEL 0557-80-1343)が7月25日、一部商品のネット販売を開始した。伊豆山の土石流災害で店は休業を続けるが、営業再開に向けて一歩を踏み出した。

魚久の「ひものセット」

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 7月3日、伊豆山を襲った土石流は、同店の目の前まで押し寄せた。店は難を逃れたが、一時水道は使えず、道路も寸断され、休業を余儀なくされた。現在37歳で、伊豆山で生まれ育った長男の高橋一平さんは、その日を振り返る。

 「通常営業していると、来店したお客さまから土砂崩れで道がふさがれたという話があった。自分は湯河原に配達があったので、出て戻ってくると、辺りは騒然としていた。すぐに店を閉めて、自分は消防団の招集に向かった」

 それからしばらくは、一平さんは消防団、一平さんの父・照幸さんは地域の役員として、それぞれ救援・復旧活動の支援に奔走した。

 7月20日時点で、同店の前は「捜索活動優先道路」に指定され、地域住民も含めて一般車両の通行ができない。消防や自衛隊の車両が頻繁に行き交い、捜索に当たる人が泥だらけで現場から戻ってくる。同店や周辺の住民は、泥を洗い流す水道やタオル、飲み物などを無償で提供し、捜索活動をいたわってきた。

 「待ってくれているお客さまもいるので、できるだけ早く営業再開したい」と、一平さんらは少しずつ準備を続け、18日から冷凍品の宅配を再開する旨をSNSで発信・告知した。SNSには、多くの反響や応援のコメントが寄せられたという。一平さんは「当初は電話、ファクス、メールでの受注を考えていたが、反応を見た時に、それでは対応しきれないと感じた。お客さまの中にネットショップを作ってくれる人がいたので、急きょお願いして作ってもらうことにした」と説明する。

 今回は、発送限定商品として「ひものセット」(4,000円、6,000円)、「うなぎの蒲焼きセット」(2,000円)と、手渡し限定商品として「切り身セット」(1,000円)、「ひものセット」(3,000円、5,000円)、「うなぎの蒲焼きセット」(1,850円)をネットショップで販売する。発送商品は全国発送する。手渡し商品はネットショップで決済し、魚久の店頭かハコスコカフェ(伊豆山)で受け取る。魚久で受け取る場合は、一般車両が通行できないため、徒歩の来店に限る。

 同店は、伊豆山で創業から60年以上にわたり、家族経営で地域住民への小売り、ホテル・飲食店への卸しを営んできた。熱海や小田原から仕入れる新鮮な魚介類に加え、店で作る総菜や刺し身などを食べて育ってきた住民も少なくない。

 一平さんは「伊豆山がこのような状況で、今後この地を離れていかなければならない人もいるかもしれない。それでも自分たちはこの場所で、地域の人たちが買い物に困らないように、頑張って店を続けていきたい」と思いを語る。「避難所でも、『早く魚久の魚が食べたい』『店を無くさないで』と声を掛けてもらった。先の見通しは立たないが、期待に答えられるように、声を励みにして、通常営業を再開できるように前に進んでいきたい」と意気込む。

 注文は魚久ネットショップ(https://uokyu.stores.jp/)から。

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