特集

【熱海でワーケーション vol.1】 熱海が目指す“新しい滞在”の形

  • 111

  •  

 熱海が現在、特に力を入れているのが「ワーケーション」です。聞き慣れた言葉になってきましたが、ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。コロナ禍を挟んでも、この数年は順調に発展を続ける観光地としての熱海が、なぜ今、ワーケーションに力を入れているのでしょうか? 数回に分けて、熱海でのワーケーションの動きやワーケーション施設を紹介していきます。

海と山に囲まれた熱海

宿泊客数の回復を見せるものの、課題は「平日の集客」

 温泉地として栄えた熱海は、1960年代には年間500万人以上の宿泊客数でしたが、2011(平成23)年度には246万人にまで落ち込みました。その後、2011年を底に回復。2015(平成27)年度に300万人を超え、2018(平成30)年度には309万人を数えました。

※出典:熱海市ホームページ「熱海市の観光」より

 コロナ禍の影響により、2020年度は149万人、2021年度は170万人にまで落ち込みましたが、2022年度は249万人にまで再び回復しています。これは、コロナ禍前の2019年度の83%となっています。

 今年に入ってからも熱海駅前や熱海銀座商店街は大きなにぎわいを見せており、順調な回復を感じさせられますが、「課題も多い」と斎藤栄熱海市長は話します。年度始めの定例会見で、斎藤市長は「コロナ禍前の8割というのは、熱海市においては厳しい数字。花火大会の追加開催や平日のビジネス利用の促進に力を入れて、コロナ前の数字に戻していきたい」と話しています。

熱海駅前の平和通り商店街のにぎわい

熱海市が力を入れるワーケーション環境の整備とPR

 ビジネス利用の促進として、熱海市が取り組んでいることの一つが「ワーケーション」の環境整備とPRです。熱海市は2022年1月、市内のワーケーション施設やワーケーションプランのある宿泊施設を紹介するポータルサイト「熱海ワーケーションホームページ」を開設しました。ホームページには現在、約30の施設と研修プランが掲載されています。

関連記事

熱海市が「ワーケーションホームページ」開設 コワーキングスペースやプラン紹介

熱海ワーケーションホームページ

 熱海市がワーケーションに力を入れる背景として、コロナ禍を経て働き方の変化が生まれたことで、熱海の立地的な特徴を生かせることが挙げられます。熱海市はホームページで「首都圏から近いこと」「豊富な温泉」「素晴らしい景観」をアピールしています。東京から新幹線で約40分、車でも約1時間45分というアクセス性の良さは、時間短縮だけでなく、グループで移動した場合の交通費を抑えられるというメリットがあります。日本を代表とする文豪や芸術家が古くから熱海を別荘地として使っていたように、余暇を温泉に入って過ごしたり、海や山を望む景観で心を癒やしたり、熱海ならではの過ごし方ができるという特徴もあります。

 熱海市は、まずはワーケーションに適した施設を増やそうと、2020年度に「熱海市ワーケーション施設等整備促進事業費補助金」を用意し、熱海を訪れる企業や個人が利用できるコワーキングスペースやオフサイトミーティングの開設を支援しています。昨年度までに14事業者がこの補助金を活用しており、コワーキングスペースやレンタルスペース、宿泊施設に併設したミーティングスペースなどが新しく誕生しています。

老舗温泉宿「古屋旅館」内に開設された「Second Lobby」

伊豆毎日新聞社が開設した「Izu My Room」

 さらに熱海市は、2023年度に「熱海市ワーケーション等プロモーション推進事業費補助金」を始めました。着々と進むハード面の整備に合わせ、市内でのワーケーションプランの造成やPRを目的とした取り組みを補助。今後、「ワーケーションの街・熱海」として認知されることが期待されます。

 加えて熱海市は10月10日、JTBと交流人口と関係人口拡大を目的にした包括連携協定を締結しました。具体的には、ビジネス利用やインバウンド、教育旅行の受け入れ促進などが挙げられています。都内の大手企業やベンチャー企業をターゲットに、経営会議や社員研修などでの熱海への滞在を促すといいます。締結式で、斎藤市長は「ビジネスシーンで活用できる観光地といえば熱海ということを常識化していきたい」と力を込めています。

民間から生まれる“新しいワーケーションの形”にも期待

 行政からの後押しもある中で、ワーケーション需要を受け入れる民間の動きも活発化しています。まちづくり会社「machimori(マチモリ)」は2022年、実践型研修プログラムとして社会共創事業「GeNSEn(ゲンセン)」をスタート。市外の企業向けに熱海の社会課題をテーマにした研修の機会を提供しています。熱海で環境活動に取り組む「未来創造部」も、地球温暖化対策や持続可能な漁業を目指した「ブルーカーボンプロジェクト」、地域資源の循環と炭素循環を作る「未来創造炭化ユニットプロジェクト」などを活用した研修プログラムを企業向けに提供しています。

関連記事

熱海で「越境学習」のシンポジウム 企業担当者や地域企業が研修成果を報告

熱海の「未来創造部」がブルーカーボンセミナー 国交省職員招く

熱海の「未来創造部」、移動式炭化ユニット稼働 二酸化炭素削減へ

「machimori」が主催した熱海での企業研修報告会の様子

 市内には体験施設やアクティビティーを提供するスポットも増えています。グループで交流したり、研修として活用したりと、法人利用も見込んでいます。

関連記事

熱海に体験スポット「ゴールデンロード」 カフェ併設も計画

熱海の「ATAMI SUP」が体験会 バーベキューや海上ヨガを楽しむ

 このように行政と民間が連携してワーケーションを受け入れるための取り組みを強化している熱海。次回以降、市内の特徴的なワーケーション施設やイベント、研修プログラムの様子などを紹介していきます。

 

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース