
熱海でバーを経営するフリーランスの編集者・高須賀哲さんが現在、歴史ある妓楼建築の建物「旧つたや」を再生し、夜に人々が集える場所をつくるプロジェクトを進めている。
非日常感を演出する内部装飾などが特徴の「旧つたや」建物内(関連画像4枚)
「旧つたや」は、熱海の歓楽街・中央町の中心部にある築70年ほどの建物。壁面に「つたや」の屋号がうっすらと残る建物は、かつて遊郭で客をもてなすために作られた「妓楼(ぎろう)建築」の様式で作られ、非日常感を演出する内部装飾などが特徴。2階建ての「旧つたや」は現在、1階の一部にスナックが入り、2階などの大部分は長年放置されて廃虚のような状態となっていた。
建物の所有者が変わったことをきっかけに、地域の不動産会社やまちづくり会社が建物の再生を計画。同じ町内でバーを経営する高須賀さんも加わり、再生のプロジェクトチームを立ち上げた。
全体のプロジェクトは、「旧つたや」をリノベーションし、個性的な店を集めた人を呼び込む新たな拠点をつくるというもの。高須賀さんは、空いた1階の一角に「夜営業の雑貨店」を開く計画を立てる。
高須賀さんは「熱海は観光地として日中の人出は多いが、夜間は中心市街地でも閑散とし、かつての活気が失われつつある。近くを流れる糸川のライトアップがリニューアルされ、今後イベント開催などが期待できるが、一過性のイベントだけでなく、夜にも日常的に人々が集まり、楽しめる場所をつくりたい」と話す。
8月26日にクラウドファンディングを立ち上げ支援を募り、目標金額150万円を超えてすでに200万円以上を集めている。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で9月30日まで受け付けている。支援金額に応じて、高須賀さんの経験をまとめた小冊子「熱海バーコマド顛末(てんまつ)記」や、妓楼の意匠を取り入れたオリジナルタオルやTシャツ、妓楼文化をテーマとした街歩きやトークイベントへの参加権などのリターンを用意する。
今後、建物の改修を進め、11月ごろの開業を予定する。高須賀さんは「観光客も地元客も楽しめるような音楽や本など文化的な要素がある個性的な場所にしたい。雑貨店は、オリジナルグッズを販売するとともに、近隣の居酒屋やバー、スナックを紹介する案内所の役割も担う。人を呼び込む拠点をつくり、熱海の夜の活性化につなげていきたい」と力を込める。