
アートバー&ゲストハウス「ennova(エンノバ)」(熱海市春日町)で10月4日、うどんイベント「熱海うどん革命」が開かれた。
うどん職人の小野ウどんさんと、ドキュメンタリー映画「Not famous man 流浪のうどん職人 ニューヨークへ行く」監督のハヤシテツタロウさんを招いて行った同イベント。映画を鑑賞した後に小野さんの手打ちうどんを味わう構成で、満席の会場では多くの人が交流を楽しんだ。
愛媛県出身の小野さんは、社会人を経て香川県で讃岐うどんの職人に弟子入りした。小野さんは「人生一度きり。麺類が好きで、日本の歴史も好きだった。面白かったら続けてみようくらいの気持ちだった」と話す。その後全国を車で巡り、各地でうどんを打つ活動を始めた。うどんを提供するだけでなく、打つ際の音でリズムを刻む「うどんパフォーマンス」なども行い、食を通じた表現を追求してきたという。
クラウドファンディングを通じ、米ワシントンD.C.のホワイトハウス前でうどんを打つ挑戦も実現。映像ディレクターのハヤシさんがその軌跡を記録した。当初はプライベートの記録として撮影を始めたが、「編集する過程で、これは映画になると思った」と、映画制作に切り替え編集を続けた。7年に及ぶ取材を経て完成。2023年には吉祥寺の映画館「アップリンク」で上映され、反響を呼んだ。
エンノバを運営する小口真世さんは「熱海で手打ちうどんが食べられる店がない」ことに気付き、自ら東京の「うどん塾」でうどん作りを学んだ。その講師が小野さんだったことから同映画の存在を知ったという。小口さんは「うどんの文化やストーリーを、熱海という土地から発信したい」と上映会を企画した。
来場者は映画鑑賞とうどんの試食を通して「職人の生き方を体感できた」と舌鼓を打った。小野さんは「何度も見ているけれど、自分の人生を映した作品だからこそ、毎回考えさせられる。立ち止まっている人に少しでも勇気を与えられたら」と語る。ハヤシさんは「普通の道を外れて好きなことをやり通す人は幸せなのか、その問いが、この映画の根底にある」と話す。
小口さんは「エンノバは、宿でもあり、アートや文化が交わる場所。これからも映画や食を通して、熱海を活性化させたい」と意欲を見せる。今後も年1回のペースでうどんイベントを企画していくという。