東海大学観光学部観光学科(神奈川県平塚市)と一般財団法人熱海観光局(DMO)が12月14日、熱海市役所第1庁舎で「地域課題への学生連携プロジェクト」発表会を開いた。
文明研究所研究員・服部泰さんのゼミに所属する3年生16人が、Z世代の視点から熱海の観光課題に対する企画をプレゼンテーション形式で発表した。
同プロジェクトは、熱海観光局が提示した2つのテーマ「Z世代が泊まりたくなる宿」と「知らなかった熱海を掘り起こせ」を基に、学生が11月16日から市内で行った1泊2日の体験を踏まえて企画を立案した。2日間は「ホテルニューアカオ」(熱海市熱海)での職業体験や、企業研修支援を行う「Gensen & Co」(銀座町)主催の町歩きを通じ、宿泊客や観光地の動向について考えを深めた。企画を通して、学生たちは「熱海は食べ歩きのイメージが強く、日帰りで行けるからこそ、ゆっくり時間を過ごすことができれば」と構想を固めていったという。
「Z世代が泊まりたくなる宿」をテーマにした発表では、Z世代が「モノ消費」よりも「コト消費」「トキ消費」を重視し、SNSを通じて宿泊先を選ぶ傾向が強い点に着目した提案があった。宿泊施設を市内体験の「ゲートウエー(玄関口)」と位置付け、町歩きの体験をホテル内で振り返り、記憶として深化させる仕組みを提案したグループや、商店街の空きスペースを活用し、「熱海プリン」をモチーフにしたSNS映えするコンセプトルームの展開を構想したグループもあった。
「知らなかった熱海を掘り起こせ」をテーマとした発表では、熱海に根付くスナック文化を観光資源として捉え直し、初心者向けの「入り口スナック」イベントを開催する構想や、観光客がSNSに投稿した写真や体験談を編集・活用する「UGCキュレーション」による参加型PR施策などを提案した。
発表を総括した服部さんは、学生の提案が「エコミュージアム構想」に通じるとの見解を示した。地域の生活環境全体を博物館と見立て、住民参加によって文化や暮らしを継承・活用していく考え方で、温泉文化、スナック文化、現代的なスイーツ文化といった多層的な資源を結び付ける点に特徴があるという。
会場では質疑応答も活発に行われ、観光関係者からは「これまでにない切り口」「実装を検討したい内容」といった声も聞かれた。熱海観光局の遠藤浩一事務局長は「Z世代が何に魅力を感じるのかは、行政内部だけでは見えにくい。学生との連携は、観光の新たな視点を得る貴重な機会」と話す。