熱海駅近くの「旧須藤家熱海別邸(須藤水園)主屋」(熱海市春日町)が11月19日、国登録有形文化財として文化財審議会から末松信介文部科学相に答申された。
須藤家は「タイガーボード」で知られる住宅建材メーカー「吉野石膏(せっこう)」の創業家。須藤永次が都内の資産家から購入したとされ、1947(昭和22)年に建物を登記した。戦後の一時期は一家で居住し、後に別邸として使ったという。主屋の四方に水鉢や池を配し、水に囲まれていたことから一族内で「須藤水園」と呼ばれていた。
主屋は木造2階建てで、1階の南側に相模灘を望む洋室や和室など居住空間を配置する。洋室の南側には洋風の格子窓と扉を設ける。玄関や窓周りには庇(ひさし)で重層的な屋根構成を見せ、外壁は簓子(ささらご)下見板張りの小壁しっくい塗りなどを施す。
前面に庭を配した和室は、ガラス引き戸により陽光を取り入れる設計で、昭和初期の熱海における別荘建築の特徴が現れているという。
2020年に耐震補強など大規模改修を行い、現在はキュレーションホテル「須藤水園」として使われている。全体的に改修した和室は元々の天井や床の間などを生かしながら、同別邸に保管されていた工芸品を中心に作家の作品や家具を並べる。
同別邸が新たに加わり、熱海市内の国登録有形文化財は15件になる。近隣には同じく登録文化財の「東山荘」や来年4月に再公開を控える重要文化財「旧日向家熱海別邸」などがあり、別荘地として発展した東山地区に注目が集まる。