熱海市内在住のアーティスト、ポール・カークレンさんがこのほど、熱海を題材にしたアクリル画の新作を完成させ、ホームページで公開した。
飼い犬の柴犬「ハチ」と「ピーナツ」をモデルにした、コミカルな画風を特徴とするポールさんの作品は今回の作品が10作目。「AT THE AIRPORT」と題した今作は、架空の「熱海空港」を舞台に、空港の保安検査場での一幕をユーモアに描いた。保安検査員のハチとピーナツのほか、犬に扮(ふん)した猫も登場。猫は実際に近所に住む猫をモデルにしているという。
ニューヨーク州出身のポールさんは現在48歳。アメリカで建築コンサルタントとして働き、大企業のオフィス開設の依頼を受ける度に世界中を飛び回ってきた。転機を迎えたのは約6年前。現在の妻、荻野典子さんとの結婚を機に、当時勤めていたアメリカの会社を辞め、日本に移り住むことを決意。2014(平成26)年2月に東京での生活をスタートした。その後、2017(平成29)年に夫婦で熱海に移住したが、「最初の熱海の印象は良くなかった」と振り返る。「東京と比較すると熱海駅前の店は閉店時間が早く、夜にはほとんどの店がシャッターを閉めた状態。古いイメージしかなかった」という。しかし、昼間の活気がある様子や、行きつけの飲食店ができてから、「熱海のイメージが変わっていった。今は熱海が大好き」と笑顔で話す。
東京にいたころは、都内を中心に建物や風景の描写が主体で、現在のコミカルなイラストの作品を描き始めたのは熱海に来てからだという。ポールさんは「熱海に来てインスピレーションを受けた。東京はやかましいが、熱海には自然に囲まれた環境がある。作品の題材は、熱海で知り合った人や犬、場所から受けたインスピレーションがほとんど」と話す。「一つ一つの作品にはストーリーがある。ハチが『がん撲滅』のリストバンドを着けていたり、隠れたメッセージが書かれていたり。小さなユーモアが詰まっている。それを見つけることも楽しんでほしい」とも。
ホームページでは、今作「AT THE AIRPORT」が完成するまでのプロセスを動画で公開している。この試みについて、ポールさんは「経過を公開することは私にとって特別なことではない。これまで経験してきた建築の世界では、プロセスこそ大切にしている」と説明する。
今後について、ポールさんは「来年からはインターネットで、作品のポストカードやグッズなどを販売できるようにしたい。ギャラリーを開設するプランもある。熱海でアートと関わりのある人たちとつながって熱海をアートで盛り上げ、芸術を根付かせていくことに貢献できたら」と意気込みを見せる。
作品はホームページで公開中。