熱海のビジネスホテル「瑞宝荘」(熱海市咲見町)がリノベーション工事を終え、ジュース&サンドイッチスタンドを併設した素泊まり宿としてリニューアルオープンした。
リノベーションは昨年夏ごろ、構想に着手。瑞宝荘3代目の渡邉慎太郎さんが昨年12月に社長に着任するタイミングで実行に移した。5月に着工し、8月末に完了。9月にリニューアルオープンし、この10月にホームページも完成した。
リノベーションでは、1階フロント周辺の古くなった壁紙の貼り替えや模様替えに加え、フロントに併設するかたちで、ジュース&サンドイッチスタンドを新たに設けた。倉庫として使っていた2階スペースに注目。道路側に面して明るい光を外から取り込める場所だったことから、宿泊客の朝食や休憩スペースに改装した。
客室は壁紙などのリフォームに加え、和式便器を全て洋式に取り替え使い勝手を良くした。リノベーションのポイントは「あえて昭和レトロ感を残したかった」と渡邉さんが話す通り、浴槽のタイルや畳張りを生かした和モダンな雰囲気となっている。
新たに併設したジュース&サンドイッチスタンドは、「ヘルシーさとボリューム感にこだわった」と言う。メニューは、全粒粉パンに鶏肉や生野菜を挟んだ「ZHSサンド」(770円)や「コールドプレスジュース」(550円)、渡邉さんがセレクトしたコーヒー豆を使った「オリジナルブレンド」(440円)など。販売は、日曜日と月曜日に限定。
利用客は8割が地元客で、「狙い通り」と渡邉さん。「スタンドを設けたのは、地域とホテルの接点にしたかった。ホテルのスタッフと地域の人たちが、ここでコミュニケーションを取ってほしい。スタンドでコーヒーを購入し、2階の休憩スペースで談笑する地域の方も多い」という。
渡邉さんは現職に就くまで、服飾関係の営業や不動産会社、工務店など、さまざまな仕事を経験してきた。「回り道してきたかもしれないが、それが結果として今に生かされている」。瑞宝荘は昨年、50周年を迎えた。今年1月に亡くなった先代の父ががんで余命宣告を受けたタイミングでもあった。「創業50年の節目に自分に役が回ってきた。瑞宝荘の良い部分は残しながら、新たにチャレンジしていきたい」と今回のリノベーションに着手した。
リノベーションの効果について、渡邉さんは「従業員のモチベーションが高くなった。きれいになり、自信を持って宿をお薦めできるようにもなった」と話す。
今後は、熱海海上花火大会を見ることができる屋上のリノベーションも計画しているという。「コロナもあって人と人が疎遠になりがちだからこそ、ここをコミュニケーションが取れる場所にしていきたい。昭和レトロさを残した宿であり続けたい」と意気込む。