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熱海の小説家・中尾ちゑこさんが茶話会 著書「起雲閣物語」の舞台裏語る

著書「熱海起雲閣物語 グレビレア・ロブスタ」の創作過程を語る中尾ちゑこさん

著書「熱海起雲閣物語 グレビレア・ロブスタ」の創作過程を語る中尾ちゑこさん

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 熱海在住の小説家・中尾ちゑこさんが著書「熱海起雲閣物語 グレビレア・ロブスタ」の創作過程を語る「BOOK茶話会」が10月11日、「柿乃木カフェレストラン」(熱海市上宿町)で開かれた。

茶話会の様子

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 中尾さんは、これまで数々の作品を執筆し、2011(平成23)年に出版した「つるし雛の港」で日本文学振興賞を受賞。2017(平成29)年の「熱海残照」では伊豆文学賞最優秀賞を受賞している。2022年に出版した、起雲閣(昭和町)を舞台にした作品「熱海起雲閣物語 グレビレア・ロブスタ」では、大正・昭和・平成を通じて、二・二六事件や熱海大火、東京オリンピックなどの実際の歴史を背景に、実在の人物と架空の人物を織り交ぜた人間模様を描いている。

 今回のイベントは、作品にモデルとしても登場する「柿乃木カフェレストラン」で、「創作の舞台裏」と題して創作を巡るさまざまなエピソードを話した。当日は市内外から約30人が集まり、耳を傾けた。

 執筆のきっかけについて、中尾さんは「前作『熱海残照』で挿絵を描いた松山英雄さんの原画展に集まった人の中から『起雲閣の物語を書いてみないか』と持ちかけられたところから始まった。いまさら起雲閣のことを私が書く必要はないだろうと最初は思った。一方で私自身もビジネスをやっているので、こんな広い土地と建物を要する起雲閣を簡単に売買する人たちはどんな人だろうというところから興味を持ち、起雲閣にまつわる人々について調べるようになった」と振り返る。中尾さんは、知識や資料を求めてさまざまな場所に出向いたという。

 起雲閣を所有していた内田信也、根津嘉一郎、桜井兵五郎ら実在の実業家や政治家、当時の内閣総理大臣・犬養毅、起雲閣を訪れた文豪の太宰治などが、名前を変えて登場。社会背景はそのままに、主人公との交流を、起雲閣を舞台に虚実が混ざり合って物語を紡いでいる。中尾さんは「実在の人物、社会的背景を徹底的に調べていると、架空の人物が浮かび上がってくる。それを小説にした。結末は決めず、起雲閣を舞台に時代背景の中での登場人物の生き方を追った。人の生き方は出会いと別れの繰り返しで、それを小説に表現した」と話した。

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