
MOA美術館(熱海市桃山町)で現在、展覧会「北斎 The Great Wave×Digital 2.0」が開かれている。
江戸時代後期に活躍した浮世絵師・葛飾北斎は、斬新な構図と大胆な色彩、緻密な描写力によって国内外で高く評価されている。北斎の作品は、日本美術の枠を超え、モネやセザンヌといった西洋の巨匠たちにも大きな影響を与えたとされる。
同展では、北斎の「冨嶽(ふがく)三十六景」を1億5000万画素の高精細デジタル画像で再現し、大画面に投影するインスタレーション形式で展示する。代表作である「神奈川沖浪裏(なみうら)」や「江都駿河町三井見世略図」をはじめ、肉眼では見落としがちな細部に至るまで、映像技術によって鮮やかに浮かび上がらせる。
作品に描かれた各地の現代の写真や映像も並列展示。江戸時代と現代の風景を比較し、当時の風俗や人々の暮らしに思いをはせながら鑑賞できるようにしている。
「冨嶽三十六景」は1831年ごろに刊行が始まり、当初の36図に加えて好評により追加された10図を含む全46図で構成されている。旅や信仰、自然に対する江戸庶民の関心を背景に、富士山をさまざまな視点から捉え、浮世絵の枠を超えた風景画の傑作として世界的に知られている。
同館広報担当者は「写真や映像は、カメラマンが何度も現地に行って撮影し、毎年バージョンアップしている。風景と作品を比較して見てもらい、美術をより身近に感じてほしい」と話す。
開館時間は9時30分~16時30分。木曜休館。観覧料は一般=2,000円ほか。6月10日まで。