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【熱海“シン・移住” vol.2】 移住して結婚、バー経営も始めた40代フリー編集者の熱海生活

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 人気観光地の一つとして数えられる熱海。都心からの移住先としても人気で、仕事をリタイアした高齢者が老後を過ごす街というイメージが強かった熱海ですが、ここ最近では20~40代の若者やファミリー層の移住も見られます。

 本特集では、「熱海“シン・移住”」と題し、熱海における移住・定住の動き、実際に移住した“シン・移住者”のインタビューなどを数回に分けて紹介していきます。前回は、熱海市の移住対策について、行政の取り組みを紹介しました。今回は、2017年に東京から熱海に移住した高須賀哲さんに話を伺いました。

これまでの記事

「熱海“シン・移住” vol.1」新たな移住の動きは「消滅可能性自治体」脱却につながるか?

フリーランス編集者・バー経営 高須賀哲さん(46歳)の場合

愛媛県松山市出身。東京大学農学部出身。都内の出版社で雑誌編集者として勤めた後、35歳で独立。フリーランスの編集者兼ライターとして活動。2017年に現在の妻と熱海に移住。熱海で結婚し、3歳の長男と3人で熱海・多賀で暮らす。2022年5月には、「バーコマド」をオープン。

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――熱海に移住した経緯を教えてください。

妻と結婚を前提に2017年、熱海に移住しました。旅行で熱海に来たことはありましたが、特に熱海に縁があったわけではありません。新居を都内や関東近郊で探していたのですが2人ともピンとくるような物件がなく、悩んでいました。

ある時、仕事が煮詰まっていたのでホテルで缶詰になって原稿を書こうと伊東まで足を伸ばしました。すると、熱海まであっという間に来ることができ、都内からの近さを改めて実感しました。

物件を検索してみると、都内よりも価格が安く、しかもオーシャンビューで温泉付きのマンションが多い。毎日旅行気分を味わえることが、旅行好きの私と妻にはピッタリだと感じて熱海への移住を決めました。

フリーランスで仕事をしていたので、場所に捉われなかったというのもありますね。

どこでも働ける環境に

――熱海ではどのような場所に住み始めましたか?

仕事で都内に出やすい場所にしようと、駅近のリゾートマンションを購入しました。決め手はやはり、オーシャンビューの景色と温泉大浴場があること。熱海は街がコンパクトで、徒歩圏内に海がありお酒を飲むところもたくさんあり、文句のつけようがありませんでした。

――移住前と後とで熱海の印象は変わりましたか?

熱海は観光地のイメージが強かったので住む場所という印象はありませんでした。でも実際には大型スーパーもあるので生活する上での不便さはあまり感じませんでした。

熱海に来てサーフィンを始めたという高須賀さん

家族構成が変化、熱海ならではの問題も

――今は熱海の多賀エリアに引っ越しされたそうですが、どのような理由からでしょうか?

移住した時は仕事ファーストで、移動に便利な熱海駅の近くを選びましたが、子どもが生まれてからは家族ファーストに変化しました。

当時住んでいたリゾートマンションは、ファミリーの定住者は少なく、多くが別荘として利用している人でした。子育てにはあまり適していないと感じることもあり、郊外に引っ越すことにしました。子育てファミリーを受け入れられるマンションが少ないことは熱海の課題でしょう。海岸沿いに大きなホテルができたことで、部屋から海がほとんど見えなくなってしまったことも引っ越した理由の一つです。

多賀には、ビーチや大きな遊具のある長浜海浜公園があり、子どもが伸び伸びと遊べる環境が整っています。実際に妻はママ友もできて、公園でよく一緒に遊んでいるようです。

最近では、私立図書館「多賀文庫」、小山臨海公園、交流施設「AJIRO MUSUBI」などで開かれている子ども向けのイベントにも家族で参加しています。

南熱海エリアには子育て世代も多いという

熱海で一風変わったバーの経営もスタート

――熱海に移住してから、仕事面での変化はありましたか?

「東京から出たら仕事が減るよ」と言う人もいましたが、むしろ移住してから仕事が増えました。距離を感じさせないようにフットワークを軽くすることは意識していました。地方での取材や移住関連の編集の仕事をもらえるようになったのは、移住者だからこそだと思います。

――大きな変化としては、バーの経営を始めたことだと思います。なぜ店を始めたのでしょうか?

当初は店をやるつもりは全くなかったのですが、こういう店があれば面白いと思ったからです。東京にはさまざまなジャンルの店があります。熱海には足りないものがたくさんあり、それが熱海の良さだとは思いますが、余白が多いことは商売をする上では可能性を感じさせてくれます。

全国の赤線や遊郭だった場所を見て回ったり、関連する書籍を集めたりすることが趣味でした。「バーコマド」は、昔の熱海の歓楽街・花街をイメージした店になっています。

花街をイメージした「バーコマド」も経営する高須賀さん

人それぞれ、自分なりの楽しみ方ができるのが熱海

――熱海への移住を考えている人にアドバイスをお願いします。

私はやってみたがりなので、熱海で新しい商売を始めましたが、無理して何かをやらなくても自分なりの楽しみ方を見つけられるのが熱海でもあると思います。街がコンパクトなので、会いたい人にすぐ会えたり、スピーディーに物事を進められたりします。街に入り込んだたら面白いことにもたくさん出合えます。

でもそういうことが苦手な人は、釣りをしたり、一人で飲んだりして、自分時間を過ごせる環境もあります。熱海に足りないものを探したらキリがありませんが、そういう不便さも楽しめばいいと思います。たまに東京に遊びに行くときの楽しさが増しました。

アドバイスとしては、「東京での成功体験は捨ててくる」ということでしょうか。自分は東京ではどこどこで働いていたとか、こんな肩書きで仕事をしてきたとか、そういうことを熱海に持ち込んでもあまり意味がないでしょう。ゼロの状態で始めた方が熱海を存分に楽しめると思います。

地域の行事にも積極的に参加するという高須賀さん

――最後に、熱海でお薦めの店を教えてください。

同業者としてすてきだと思うバーがいくつかあります。「Bar柊(ひらぎ)」は、創業47年のバーで、格調高くシックなインテリアが別世界に来たかのような気分にさせてくれます。ずっと店を守ってきたママもかっこよく、昔のいろいろな話を聞くことができます。

もう一軒は「スナック亜」。スナックと言いながらカラオケがなく、落ち着いた雰囲気が魅力です。ママは話しやすく、地元の常連客が多い熱海の社交場のような店です。

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