銭湯「渚ゆ」(熱海市渚町)が10月中旬、昭和の風情が残る渚町にオープンする。
「渚ゆ」にリノベーションした元飲食店を紹介する市来さん(関連画像5枚)
かつて飲食店として使われ、空き物件だった築60年ほどの建物を「マチモリ不動産」(渚町)が購入。しばらく倉庫として使っていた建物をリノベーションした。まちづくり会社「machimori」(銀座町)が運営する。
延べ床面積は約30平方メートル。2階建てだったが、2階部分の床をなくして吹き抜けに改装した。湯船は男女1つずつで、近くの温泉管から引いた温泉を入れる。洗い場は男女2つずつのこぢんまりとした作りにした。男女の浴室は可動式の間仕切りで分けられていて、湯を抜くとイベントスペースとして利用できる。壁には、山と海の間で湯を楽しむ人をイメージしたという壁画を描いた。
machimori社長の市来広一郎さんによると、熱海市での銭湯の新規開業は、すでに閉館した「清水町共同浴場」以来、実に35年ぶりという。市来さんは「市内にゲストハウスをオープンした時から、いつか銭湯を作りたいと思っていた。念願のプロジェクトが形になった」と話す。
市内にはかつて、たくさんの共同浴場があったが、次々と姿を消している。長年地元で愛されていた「日航亭・大湯」も昨年11月に惜しまれつつ閉館した。マチモリ不動産の社長・三好明さんは「温泉を引いた自宅やリゾートマンションが増えたことで共同浴場が減った。一方で、街なかには『風呂なし物件』の空き家が数多く存在している。『渚ゆ』を作ることで、『銭湯付き物件』になり得る。街を一つの家と見立てて、住居に足りない機能を街に作っていく『まちごと居住』を提案していきたい」と話す。
入浴料金は、観光客など一般利用は大人=1,000円、子ども(12歳未満)=500円。近隣住民が対象の一般会員は500円。複数回利用できる月決め会員は、月額7,500円。温度管理など運営に携わる「湯守(ゆもり)会員」も募集する。
市来さんは「住民の暮らしの中や観光客が訪れる熱海に、気軽に温泉に入れる環境を残していければ。呼応して銭湯周辺に新たな事業が生まれることも期待したい」と話す。
営業時間は14時~21時。火曜・水曜定休。