MOA美術館(熱海市桃山町)で11月15日~19日、日本の伝統文化を多角的に紹介するイベント「Kogei Dining 2025-工芸・食・芸能-」が開かれた。
工芸作家による講話や和食の提供、舞踊公演の鑑賞などを通して、工芸の背景にある美意識や価値を体験してもらうことを目的に企画した。日本文化の魅力を国内外に発信する「日本博」プロジェクトの一環として、MOA美術館、文化庁、日本芸術文化振興会が主催。監修は内田篤呉館長と重要無形文化財「蒔絵(まきえ)」保持者で漆芸家の室瀬和美さんが務めた。
初日の15日は20人が参加。重要無形文化財「長板中形」保持者の松原伸生さんによる卓話が行われた。松原さんは、型紙を使う日本の染色技法「長板中形」について、工程を示しながら映像を用いて解説。制作の多くが手作業で行われる点や、天候や水の状態を考慮しながら作業を進める特性などを示し、「自然の条件と向き合う技法である」と説明した。
食事のプログラムでは、有機農法や地元産の食材を中心に構成した和食を提供。料理は、室瀬さんらが手がけた器に盛り付けられた。その後、会場を能楽堂に移し、歌舞伎役者・坂東玉三郎さんの舞踊を鑑賞した。館内で開催中の展覧会「坂東玉三郎衣装展」「琳派(りんぱ)デザイン 宗達・光琳・抱一」も鑑賞した。
横浜市から訪れた女性は「よく行く歌舞伎座とはまた違った趣で玉三郎さんの舞踊を見ることができて感激した。衣装展で展示された豪華な衣装には驚いた。またゆっくり来たい」と話す。