熱海ブルーノ・タウト連盟(熱海市梅園町)が5月25日、東山荘(春日町)で特別講座「パネルトーク 東山文化」を開いた。別荘地として発展した東山地区の歴史や文化の話に、参加者は興味深く耳を傾けた。
特別講座「パネルトーク 東山文化」に登壇した東山ゆかりの3人
同連盟が4月に始めた「タウト塾」の第1回となる特別講座。ドイツの建築家ブルーノ・タウトが設計した、国内で現存する唯一の建築物「旧日向家熱海別邸」(春日町)の歴史や魅力、東山地区の成り立ちなどを発信する。
会場の東山荘は国登録有形文化財に指定され、旧日向家熱海別邸に隣接。現在は非公開の施設となっている。パネルトークには、東山地区のゆかりのある3人がパネリストとして登壇。東山地区の貴重な話を披露した。同地区に在住で「月の栖 熱海聚楽ホテル」(田原本町)社長の森田金清さんは、「この地域は熱海の別荘の発祥のような場所。高貴なイメージの場所で、子どもの頃はめったに来るような場所ではなかった」と話す。「昭和9年に丹那トンネルが開通、昭和39年に熱海駅に新幹線が開通した。昭和44年には宿泊客数が年間500万人に。町を歩くげたの音や旅館からの客の声が絶えない時代だった」と振り返る。
東山地区に約60年在住の清水弘之助さんは、若い頃に旧日向家熱海別邸によく出入りしていたという。「昔は、この海側はほとんどが国有地で、国立病院や裁判所、税務署、小学校などがあった。周辺は旧財閥系や大手企業の別荘や保養所が多かった。新幹線が開通し、新婚旅行といえば熱海ということで、多くの観光客が熱海に訪れていた」と清水さん。
東山荘は世界救世教の創設者・岡田茂吉が住まいとして使っていた。現在、東山荘を管理する山谷賢治さんは「東山は景観が良く、交通の便も良いため、岡田茂吉が昭和19年から居を構えた。桃山の拠点と合わせて、熱海を国際文化都市と、健康に良い町にしたい構想だった」と説明する。森田さんは「今後、団塊世代が年を取り、人口もさらに減少が予想されている中で、外国からの観光客を増やしていく必要がある。外国人観光客は日本文化を見たい。熱海であれば、タウトの建築、起雲閣、MOA美術館などの価値ある文化・財産があり、これらを観光に活用していければ」と期待を込めた。
参加者は東山荘の施設内を見学し、貴重な東山文化の価値に触れた。市内から夫婦で参加した女性は「ホテル・ミクラスで開催されていたタウト展がきっかけで、今回の講座に参加した。東山地区の歴史や東山荘の見学は貴重な経験」と喜んだ。旧日向家熱海別邸は来年4月の再公開に向けてリニューアル工事中。タウト塾は、6月以降も特別講座やイベント、オンライン講座を行い、再公開に向けて情報発信を続ける。