熱海ブルーノ・タウト連盟(熱海市梅園町)が6月25日、東山荘(春日町)で6月特別講座を開いた。ドイツの建築家ブルーノ・タウトが設計した「旧日向家熱海別邸」地下室の構造やデザインに参加者は興味深く見入った。
特別講座は、同連盟が4月に始めた「タウト塾」のプログラムの一環。今回は、同連盟の代表・矢崎英夫さんが講師を務め、東山荘や旧日向家熱海別邸がある東山地区の開発や旧日向家熱海別邸・地下室に施したタウトの設計の特徴などを説明した。
矢崎さんは「熱海の発展は交通の発展」と題し、1925(大正14)年に開業したJR熱海駅、1934(昭和9)年に開通した丹那トンネル、1964(昭和39)年の新幹線開業が、熱海の発展に大きく寄与したと説明。特に丹那トンネルの開通では多くの観光客が熱海を訪れるようになり、大正後期から昭和初期にかけて東山地区、桃山地区を中心に別荘地が積極的に開発されたという。タウトは1933(昭和8)年5月から3年5カ月間、日本に滞在し、1935(昭和10)年に、旧日向家熱海別邸の地下部分を設計している。
矢崎さんは、東山地区には人間国宝で江戸長唄の「杵屋六左衛門旧邸」をはじめ、キュレーションホテルとして生まれ変わった日本家屋や別荘の建物など貴重な建築物が現存していることを挙げ、「東山文化とともに、熱海をブルーノ・タウトのメッカにしたい」と意欲を見せた。
旧日向家熱海別邸・地下室については、貴重な資料や画像をプロジェクターで説明。タウトの設計で特徴の一つに挙げられる朱色で表現した室内や桂離宮から影響を受けたとされる意匠や眺望の魅力を解説した。
タウト塾は、オンライン講座、特別講座、イベントの3本柱で展開し、来年4月の旧日向家熱海別邸の改修オープンに向けて、タウトの魅力や功績を発信していく。
次回の特別講座は7月26日。国登録有形文化財の東山荘をテーマに取り上げる。定員は20人。事前予約制。参加無料。