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熱海の「ATAMI ART GRANT」閉幕 旧ホテルニューアカオ館に1万人超が来場

入館に長い列を作った「ATAMI ART GRANT」の様子

入館に長い列を作った「ATAMI ART GRANT」の様子

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 熱海市内の各所にアーティストが作品を制作・展示するイベント「ATAMI ART GRANT」が12月12日に閉幕し、宿泊施設「ACAO SPA & RESORT」(熱海市熱海)館内の展示イベントも延長期間を経て20日に終了した。

アーティストの展示作品

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 東方文化支援財団(東京都品川区)とACAO SPA & RESORTが進める熱海の魅力をアートで再発見する取り組み「PROJECT ATAMI」の一環。公募で選んだ30組のアーティストと滞在制作型プロジェクト「ATAMI ART RESIDENCE」に参加した20組を併せた50組のアーティストが、熱海市内の宿泊施設や屋外施設など22カ所と同ホテル館内に作品を展示した。

 会期中にメイン会場の一つ「ホテルニューアカオ館」の営業終了が発表されたこともあり、SNSなどで知った多くの人が駆けつけ、同館の入場者だけで1万人を超えたという。プロジェクト総合ディレクターの伊藤悠さんは「初めての熱海でのイベントだったが、アーティストの皆さんが企画の趣旨を理解して、熱海の街と向き合って作品を制作してくれた。地域の人や作品を展示した事業者とアーティストとの横のつながりが生まれたことにもプロジェクトを展開した意味があった」と振り返る。

 参加したアーティストの多くは同館に1、2カ月間滞在しながら、熱海の街を散策して見た風景や出会った人、感じたことを題材に作品を仕上げた。熱海は昔から芸術家や作家らが工房や別荘を構えていたこともあり、美術館やギャラリー、文化財の指定を受けている建物などが多く点在する。観光色の濃い地域とあって芸術・文化のイメージは薄いが、今年11回目を迎えた「ATAMI ART EXPO2021」や熱海未来音楽祭などのアートイベントも頻繁に開かれている。一方で、住民にとっては日常的に熱海と芸術・文化を結び付ける事柄に触れる機会はそれほど多くない。広報担当の亀井しのぶさんは「アーティストが熱海に滞在し、住民や事業者がアーティストやアート作品に触れたことで、アートが少し身近なものになったのでは」と話す。熱海の街中を彩ったアート作品のいくつかは、会期が終了してもそのまま残り続ける。伊藤さんは「花火や季節の花のように一時的なものではなく、続けていくことで1年を通して熱海がアートで彩られていくことになる」と期待を寄せる。

 作品を見に熱海を訪れた人の中には、起雲閣など市内の文化財を見て回った人もいた。街中の至る所に作品が展示されているため、普段は見ないような熱海の建物や景色に触れることができたという声もあったという。伊藤さんは「都心で開くのとは違った、熱海の歴史や空間、自然を生かした取り組みにしたかった」と手応えを見せる。

 将来的には熱海にアーティストが定住し、アーティストをサポートする富裕層が集まる街にしていくというビジョンを掲げている。今回の取り組みを通して、熱海の事業者らが参加アーティストを送迎したり、食事を提供したりと、街ぐるみでアーティストを支援する光景が見られたという。実際に、「来場者や事業者がアーティストの作品を購入する動きもあった」(伊藤さん)という。

 今後について、伊藤さんは「アワードのような優秀なアーティストを一人選ぶような方法ではなく、『グラント』と『レジデンス』の二本柱で、熱海の街が一緒になってアーティストをサポートし、私たちが並走していくことで来年以降も続けていきたい」と話す。

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