熱海銀座商店街のコワーキングスペース「naedoco(ナエドコ)」(熱海市銀座町)が11月28日、熱海の特産品であるダイダイの収穫体験イベントを行った。ダイダイ農家の岡野谷伸一郎さんが管理する熱海市上多賀の畑に、同施設の会員や管理者を中心に10人以上が集まり、畑は収穫したばかりの新鮮なダイダイの香りが広がった。
岡野谷さんは昨年、所有者の倉田晃平さんから畑を借り受けてダイダイの栽培を開始。今年が2年目の収穫となる。10月31日にダイダイの収穫を始め、11月に入って正月飾り用の出荷を開始。12月にかけて収穫のピークを迎える。今回のイベントは、「熱海の特産品であるダイダイのことをもっと知ってほしい」という岡野谷さんの思いとnaedocoのスタッフとの思いが一致したことで実現した。今回の体験イベントについて、naedocoの責任者、廣野みすずさんは「会員が地域に出て行うイベントは今回が初めて。以前から、会員と一緒に地域課題にアプローチする取り組みを実施したいと考えていた。会員の中には、熱海に何かしら貢献したいという人も増えている。地域の人とつながりを持つことで何かが生まれてくれば」と企画の背景を説明する。
収穫体験では、岡野谷さんが参加者にダイダイの取り方をレクチャー。参加者はダイダイの色付きを確認しながら、思い思いに収穫に励んだ。1時間ほどで約200キロのダイダイを収穫。参加した江間勇貴さんは地元・多賀の出身。都内のデザイン会社に勤務するが、新型コロナの影響により、現在はnaedocoでリモートワークをしているという。「地元に貢献したいという思いはあったが、きっかけが無かった。糸口が見つかればと思って参加した。実際に岡野谷さんが奮闘している姿を見て、自分も何かできることをしたいと思った」と言う。
同じく参加者の佐藤雅之さんは、naedocoの向かいで営業するイタリアンジェラート店「La DOPPIETTA(ラ・ドッピエッタ)」の店舗責任者。佐藤さんは「ジェラートの原料は静岡県産のものを取り入れている。2年前からダイダイを使ったメニューを販売しているが、店では2番目に人気。農家と一緒に育て、収穫することで、ジェラートの素材が作られる過程も見られる。今後、他の商品開発にもダイダイを取り入れていきたい」と意気込みを見せる。
収穫後には青空の下、参加者が収穫したダイダイをその場で搾った即席の「ダイダイジュース」が振る舞われ、初めて口にする参加者からは「酸っぱい」という声も上がった。座談会では、ダイダイを使った商品の6次産業化のビジョンを岡野谷さんが説明。廣野さんは「地元の生産者と直接話し、会員と地域課題を一緒に考えることができ非常に良い機会になった。naedocoは、ただスペースを貸すだけの役割ではなく、地域の人たちも巻き込んだアクティブな活動ができるコワーキングスペースにしていけたら」と期待を込める。