MOA美術館(熱海市桃山町)で12月4日、「Kogei Dining」が開催された。今回のイベントは、日本の伝統工芸の美しさを工芸作家との交流や食事会を通して体験するプログラムの一環。主催は文化庁と日本芸術文化振興会。
「Kogei Dining」は、東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に「日本の美」を国内外に発信する「日本博」の関連プログラム。当日は、文化人によるトーク、工芸作品の展示観賞、食事会が行われた。
トークには、漆芸家で重要無形文化財「蒔絵」保持者(人間国宝)の室瀬和美さん、「Toshi Yoroizuka」オーナーシェフの鎧塚俊彦さん、サッカー元日本代表で「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」代表の中田英寿さんが登壇。室瀬さんは「工芸の基本理念は自然との共生で、漆も同じ。頂いた自然の素材を400~500年使えるものとして最大限生かす。それが日本工芸の素晴らしさ」と話す。鎧塚さんは国内外で農業も行っている経験を踏まえ、「良い素材ほど手を加えない方が良い菓子ができる。素材を生かすために自然の力を借り、自然、農家、自治体がウィンウィンになっていくことが大切」と説明した。
中田さんは現役引退後、日本の伝統文化を理解するために全国を旅して、さまざまな人と会い話をしてきた。「日本の工芸の良さは、自然を生かしていること。四季の移ろいを生活に取り入れて表現している」と話す。「7年間イタリアにいて、ワイナリーも訪れた。だが、引退後に日本国内の日本酒の酒蔵を回る中、日本人である自分にとって、日本酒を発信することが合っていると感じた」と取り組みの背景を説明する。
同館の内田篤呉館長は「日本の工芸は『使って楽しむ』という特色がある。使って、いずれは土に還る。サスティナブル社会にもつながる」と話した。
プログラム後半の食事会では、料理を工芸家の作品に盛り付けて提供し、参加者は工芸と食とのコラボレーションを味わった。館内では今月13日まで、この催しのために作られた工芸家18人の作品を展示している。館内の「THE SHOP」で販売も行う。