熱海銀座商店街のオーガニックスタンドカフェ「Organic Box(オーガニックボックス)」(熱海市銀座町)を経営する夫婦が5月1日、「Organic Box Farm」を立ち上げて農業を始めた。
2019年8月に杉本祐一朗さん・良花さん夫婦が開業した同店。オーガニックや無農薬の原材料で作るフルーツサイダーやホットドリンク、かき氷などを提供する。かんきつは、できる限り地元産を使いたいと熱海や湯河原などのレモンやダイダイを中心に仕入れてきたが、全国的にレモンの収穫量が少なかった昨年は、材料の調達に苦労したという。祐一朗さんは「以前から考えていたが、昨年の苦労をきっかけに自分たちで果物を育てようと決断した」と振り返る。
農地の確保は市役所などに相談し、昨年10月から市内で候補となる農地を10カ所以上見て回ったが、無農薬で栽培できる農地という条件が合わず確保には苦労したという。熱海・下多賀でかんきつ類を栽培する農家と出合い、農地の一部を貸してもらえることになった。
2人が借りた農地は、網代駅南側の高台にある農地など3カ所。合わせて約1,000平方メートルあり、ポンカンやレモン、ミカン、キンカンなどが植わる。現在は、枝切りや草刈りをして、10月ごろから始まる収穫に備える。秋には早生ミカンやグリーンレモン、1月にはポンカンなどの収穫を予定し、収穫した果物は同店で提供するドリンクのシロップなどに加工する。今後は、ドライフルーツやストレートジュースなど、新たな商品の開発も計画しているという。
2人が農業に取り組むのは初めてだが、祐一朗さんは「農地の貸し主や農家の知人に教えてもらいながらチャレンジしている」とし、良花さんも「勉強しながら、まずは実践しようという気持ちで取り組んでいる」と話す。元々、減農薬で栽培してきた農地を今後は農薬を使わずに果物を栽培し、数年後には有機JAS認定を目指すという。
すでに市内のスイーツ店や都内の知人から、秋以降に収穫する果物を購入したいと声がかかっているという。祐一朗さんは「新しい商品も作り、熱海の農作物をPRしていけたら」と意欲を見せる。良花さんは「熱海でも農家の後継者不足が叫ばれている。今後は収穫体験なども提供したいので、若い世代の取り組みを発信して、農業を盛り上げていきたい」と話す。