熱海特産のダイダイの価値を高めて国内外に新商品を届けるプロジェクト「熱海だいだい和菓子プロジェクト」が7月1日、立ち上がった。
9月発売開始を予定する「だいだい畑のあんドーナツ」(関連画像4枚)
同プロジェクトを立ち上げたのは熱海や伊豆などに和菓子店を展開する和菓子店「石舟庵(せきしゅうあん)」(伊東市)。これまでも伊豆の名産品ニューサマーオレンジや下田の養蜂場が作るハチミツなど、地元の原材料を積極的に和菓子づくりに使ってきたという。ダイダイも10年ほど前から何度も和菓子に生かそうと挑戦してきたが、独特な苦みや渋みが邪魔をして商品化に至らなかったという。
プロジェクトを発足した経緯について7月6日、同社の熱海店(熱海市咲見町)で社長の高木康行さんは「2年前、ダイダイを熱海で栽培する岡野谷伸一郎さんと交流が始まり、岡野谷さんの熱い思いに触れた。製造方法を見直して再度商品化にチャレンジしたところ、余分な苦みや渋みを取り除いたダイダイのピューレの開発に成功した。改めてダイダイの長所とポテンシャルに気づき、ダイダイの素晴らしさを多くの人に届けるためのプロジェクトを立ち上げることにした」と話す。プロジェクトリーダーの森優作さんは「製造過程では、ダイダイの香り、風味、色を残そうと試行錯誤した。おいしいものが出来上がった」と胸を張る。
プロジェクトメンバーは、同社の20代の社員5人で構成。岡野谷さんのほか、外部の専門家らの協力を仰ぎながら、ダイダイを使った新商品の開発、海外への販路拡大を目指す。地元の子どもたちにもダイダイや和菓子の文化を知ってもらう取り組みとして、保育園や幼稚園での「だいだい和菓子づくり体験」も計画する。
昨年6月に販売を開始したダイダイを使った和菓子「だいだいしぐれ」に続き、9月には新商品「だいだい畑のあんドーナツ」の販売を開始する。パッケージのデザイナーには、ダイダイの畑が周囲に広がる熱海・下多賀出身のイラストレーター・富岡美紀さんを起用した。高木さんは「子どもや若い世代にも味わってほしい商品。若い富岡さんの意見も取り入れている」と話す。
ダイダイは、海外では「ビターオレンジ」と呼ばれ、料理や洋菓子の香り付けに使われることもあるという。「ダイダイはヨーロッパでの親和性が高いと考えている。来年10月にパリで開かれる食品展示会への商品提供を目標に掲げる。ダイダイピューレ自体のアピールもしたい」と高木さん。「ユズやスダチが海外での人気が高まっているように、ダイダイを熱海から世界に発信していきたい」と意欲を見せる。