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【熱海・スナックと私 vol.6】 「古屋旅館」社長・内田宗一郎さん(後編:隠れ家BAR Bacchus)

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 特集「熱海・スナックと私」では、市内の経営者にお薦めのスナックを紹介してもらいながら、これまでの人生やこれからの経営ビジョンなどを伺います。聞き手は、熱海経済新聞副編集長でボイストレーナー「たーなー先生」としても活動する田中直人です。

 前回は、江戸時代から160年以上続く老舗干物店「釜鶴」5代目の二見一輝瑠(ひかる)さんにインタビューしました。今回は、1806年創業の老舗温泉宿「古屋旅館」17代目の内田宗一郎さんに話を伺いました。1973(昭和48)年生まれで、現在51歳。熱海温泉ホテル旅館協同組合理事、熱海商工会議所青年部顧問、熱海市観光協会副会長などを務める内田さん。旅館のほか、現在では市内でスイーツ店も経営しています。3回に分けて、内田さんのこれまでの取り組みや思いについてお伝えします。

前回の記事

【熱海・スナックと私 vol.4】 「古屋旅館」社長・内田宗一郎さん(前編:Bar Negroni)

【熱海・スナックと私 vol.5】 「古屋旅館」社長・内田宗一郎さん(中編:スナック縁)

――3軒目に選んだ「隠れ家BAR Bacchus(バッカス)」について、魅力などを教えてください。

内田 店の空気感が好きです。入り口が小さくて新宿などにはありそうですが、熱海では印象に残りやすい店だと思います。20代前半の女性が北海道から出てきてスナックのスタッフをやっているのも、今の熱海を表しています。15年くらい前だと珍しいこと。若い人が外から熱海に来て頑張っているので応援したい気持ちになります。

移住した女性がカウンターに立つ「バッカス」

――前回までは過去と現在について伺いました。内田さんが描く熱海の未来について聞かせてください。

内田 4月に熱海版DMOが稼働し始めました。頭脳とも言える役割になるので熱海にとってはプラスになるでしょう。現在の熱海は、日本人への認知度は高まり、観光客の満足度も上がってきていますが、ネイチャーがないので、なかなか草津は越えられない。それでも熱海という条件の中では最大限頑張っていると思います。

このペースでいけば急に廃れることはないと思いますが、この先の課題はインバウンドです。日本人以上に、ネイチャーがないと来ない人たちなので、熱海の埋もれている資産を皆で探し当てて、しっかりPRしていくプロセスが大事になってくるでしょう。決して簡単なことではありませんが、やっていかなければいけないですし、自分も観光協会の立場として意見できることがあれば、していきたいと思います。

宿泊客数は、現在の3割増しの390万人ほどにはしていきたい。日本の人口が減少していくことを考えれば、インバウンドでその分を増やすことが理想だと思います。現在建設中のホテルもありますが、熱海は土地が少ないのでこれ以上新規のホテルが建ちにくいエリアです。宿泊客が3割増えれば、既存の宿泊施設はどこも黒字経営できるでしょう。

――インバウンドを集客するために必要なことはどんなことでしょうか。

内田 熱海にはインバウンドに向けたネイチャーコンテンツが不足しています。せっかく姫の沢や十国峠、海があるので、身近に大自然に触れられる場所だということをアピールしていく必要があるでしょう。キャンプやハイキング、SUPなどのコンテンツを開発したり、実行できる人を育成したりと、着実に進めていくべきだと思います。

――熱海で働きたい、熱海に住みたいという人を増やしていくには何が必要でしょうか。

内田 ITやAIの分野で立ち遅れ、自動車や電機産業も他国に抜かれていく中で、観光産業はとても有望です。日本のおもてなしは何百年もかけて熟成してきたものです。食に関しても世界一だと思います。これを生かせるのが日本の観光業です。

観光業が憧れの職業になること、熱海の旅館で働くことを憧れに思ってもらえるように、空想ではなく実現していきたい。お客さまに付加価値を提供した対価として適切にお金を頂き、従業員の給与に還元していきたいと思います。

おもてなしを大切にする古屋旅館

――今の若者に向けたメッセージをお願いします。

内田 若い人たちはとても優秀で情報の取り方も知っていて頭も良いと思います。臆することなくチャレンジしてほしい。できれば若い頃にアルバイトでもいいので、人と接する経験を積んでもらいたいです。そうすれば、知識がある上に人間味のある人材として成長していけると思います。

私たちよりも優秀なので、未来を支えていってほしいです。

――今回のテーマ「スナックと私」に関連し、熱海の夜の魅力を教えてください。

内田 個性的な店がコンパクトな街の中にまとまってたくさんあることです。仕事柄、全国の温泉地を回ってきましたが、熱海のような街は希少だと思います。

ただ、若い人がお酒を飲まなくなっていることは事実としてあるので、ノンアルコールや微アルコールメニューの提供など、お酒を飲まない人も楽しめるようなアピールは必要になってくるのではないでしょうか。

国産ウイスキーや熱海のジンを置く「バッカス」

――最後に、将来の夢を教えてください。

内田 熱海にもっとたくさんの若い人たちが移住してきて笑顔を見られることです。この「Bacchus」のように若者が頑張っている店が増えるといいと思います。

――3軒のスナックを回りながら内田さんの過去から現在、今後の展望を伺いました。ここまでありがとうございました。

内田さんお薦めの「隠れ家BAR Bacchus」について

開業 2023年7月

スタッフ 竹内美琴さん

席数 8席

営業時間 21時~翌5時

住所 熱海市中央町10-2

電話 0557-52-3304

「スナック縁」の姉妹店として、北海道出身の女性スタッフや男性スタッフがカウンターに立つバー。店名の通り、隠れ家のようなアットホームな雰囲気が特徴で、地元の人がよく利用する店。ジャパニーズウイスキーやシャンパン、熱海の蒸留所が製造するジンなどを楽しめます。

「古屋旅館」過去の記事

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聞き手 田中直人

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