熱海の老舗温泉宿「古屋旅館」(熱海市東海岸町)が4月16日、温泉熱活用の10カ年計画を終え2023年度の重油代ゼロ化を達成したと発表した。
加温して大浴場や客室風呂のシャワーなどに活用(関連画像2枚)
1806年に創業し、熱海では最も歴史がある温泉旅館とされる同館。省エネによる同館への経済効果と環境負荷の軽減を目的に、2014(平成26)年に温泉熱活用の10カ年計画を策定し、チタン製熱交換システムの導入などに取り組んだ結果、計画最終年の2023年度は重油代の負担がゼロになった。
温泉熱の活用には全国の温泉地などが取り組んでいる。環境省もガイドラインを出して、有効活用への周知と促進を図ってきた。同館が導入した熱交換システムは、温泉熱をコイルで循環水に伝えて加熱する仕組み。従来の銅製コイルに代わり耐食性に強いチタン製コイルを使うことで腐食を防ぎ、メンテナンスの手間やコストを削減できるという。
同館では、加熱した湯を大浴場や客室風呂のシャワー、調理場やパントリーで利用。節水タイプのシャワーや食器洗浄機を併せて導入するなど、館内全体の温水利用を削減する取り組みを行うことで、燃料に使ってきた重油の使用量を年々減らすことに成功したという。
「導入の投資コストは約1年半で回収でき、経済効果も大きかった」と同館の内田宗一郎社長。「高温の自家源泉を活用できたことが成果につながった。今後も地域固有の資源である温泉熱の有効活用を探ると共に、継続して取り組むことで環境負荷の軽減に努めていきたい」と話す。