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熱海の洋菓子店「モンブラン」が80周年 初代の味を受け継ぎ残す

80周年を迎えた「モンブラン」でパティシエを務める村井梢さん

80周年を迎えた「モンブラン」でパティシエを務める村井梢さん

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 熱海の洋菓子店「モンブラン」(熱海市銀座町)が2025年で開業80周年を迎えた。

店を利用した著名人のサインや写真が並ぶ店内(関連画像6枚)

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 1947(昭和22)年にフランス料理店として創業した同店。初代の新田道雄さんは、横浜の「ホテルニューグランド」で修業してフランス料理や洋菓子を学び、同店をオープンした。1955(昭和30)年、洋菓子専門店に改装し、現在の「モンブラン」の営業を始めた。

 現在、新田さんの次女・竹森満里さんと共にパティシエとして店を切り盛りする長女・村井梢さんは「開業月は定かではないが、お客さまに支えられて80周年を迎えられた。父が大切にしてきたケーキ作りへの姿勢を自分たちも守ってきた」と話す。

 早朝から仕込みを始め、開店時間には「イチゴのショートケーキ」「チョコレートパイ」「モンブラン」など10~13種類の洋菓子を並べる。新田さんからは20年ほど前、2人に店のバトンを渡されたという。「一部のケーキの形は変わったが、工程や原材料は変えずにやってきた。パイは時間がかかるが、生地を折る回数も変えていない。材料も都内の決まった業者から仕入れている」と村井さん。「父から手取り足取り教わったわけではないが、大切なポイントはしっかり覚えた」とも。

 同店の洋菓子は、熱海を訪れた作家らにも愛されてきたという。文豪・谷崎潤一郎が同店で必ず購入したという「モカロール」は、今でも看板メニューの一つ。村井さんは「父はよく谷崎さんの自宅にフランス料理を作りに行っていた。モカロールは、谷崎さんのお孫さんが好きなので、いつも土産にしていた」と振り返る。

 店内にはテーブル席6席を備え、洋菓子と共にコーヒーと紅茶も提供する。常連客が頻繁に立ち寄る一方で、時代の変化を感じることも多いという。「昔は土産に10個単位でまとめて買っていくお客さまがたくさんいたが、最近はスイーツが多様化して購入の仕方も変わってきている。原材料も高騰していて薄利少売になり、商売の難しさを感じる。高齢になり後継者もいないので、いつまでできるか分からないが、できるだけ長く店を続けていければ。生真面目で妥協しない父の意思を、これからも守っていきたい」と力を込める。

 営業時間は10時~18時30分。水曜定休。

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