料理人が一定期間地域に滞在しながら料理を提供する「シェフ・イン・レジデンス」の実証事業が2月19日、レストラン「Himono Dining かまなり」(熱海市銀座町)で始まった。
シェフ・菅野智子さんが提供する干物を使ったコース料理(関連画像4枚)
旅行会社「JTB」が行う熱海エリアの「食を通じた滞在価値向上」「ナイトタイムエコノミーの活性化」を目的にしたエリア開発事業の一環。昼間のにぎわいに比べ、夜間の回遊が弱いという課題を背景に、既存の地域資産を生かして新たな人の流れと経済循環を生み出すことを目指す。
事業は、創業160年を超える老舗干物店「釜鶴」が運営する「Himono Dining かまなり」と連携して実施。同店は、長年培ってきた干物文化とシェフの創作料理を融合させ、新たな食の魅力を発信する。愛犬同伴可能な個室を備える同店のスペースを提供することで、ペット連れの旅行者も楽しめる環境を用意する。
期間中は入れ替わりで3人の人気シェフが熱海に滞在し、生産者や住民と交流しながら地域食材を生かした料理を提供する。初回は東京でレストランを経営するシェフ・菅野智子さんが、干物カヌレや干物を取り入れた野菜料理、イワシの干物のエスカベッシュなどを提供。伊豆牛や静岡産の果物を使った料理も盛り込み、地域食材を生かした構成とした。菅野さんは「現地で生産者や食材に触れることで発想が広がり、新しい料理が生まれる」と話す。
メニューは、カジュアルコース「熱海の夕暮れアペロ」(5,500円)、スタンダードコース「シェフズ・レジデンス」(8,800円)、プレミアムコース「熱海ガストロノミー・オマカセ」(1万4,300円~)の3コースを用意する。
釜鶴の二見一輝瑠社長は「熱海は別荘地として人気があり外食も多い街だが、コロナ禍をきっかけに夜の利用が減ったことを危惧していた。今回声をかけてもらい、協力したいと思った」と話す。「創業以来160年以上、干物作りを続けてきたが、『干物は朝食』というイメージが強かった。今回の取り組みは干物をディナーの主役へと引き上げる挑戦。外から来たシェフが熱海に住み、干物をどう料理するのか、その化学反応を楽しみにしている」と期待を寄せる。
JTBは、料理人ネットワークを活用した食イベントやケータリング事業を展開しており、今回の実証では観光地が抱える「夕食難民」などの課題解決も視野に入れる。「今後は食を軸に、熱海の夜に新たな魅力を生み出し、地域全体の回遊性向上につなげたい」としている。