熱海のホテルニューアカオ (熱海市熱海)で7月3日、アーティストとの交流やワークショップのプログラム「AKAO OPEN RESIDENCE#2(オープンレジデンス)」が行われた。予定していた4日のプログラムは、伊豆山地区の土砂災害の発生による安全確保のため中止となったが、急遽、チャリティーTシャツの販売を始め、支援を呼び掛ける。
同プログラムは、ホテルニューアカオが東方文化支援財団と進める「PROJECT ATAMI」の一環として行われている。3月に始動し、アーティストらが同館に約1カ月滞在しながら作品を制作し発表する滞在制作型プロジェクト。3月~12月を全5タームに分け、年間20人のアーティストが参加する。アーティストの制作活動を支援することに加え、熱海の魅力をアートにより再発見し、発信していくことを目的としている。
5月~6月の第2タームには4人のアーティストが同館に滞在し、作品を作り上げた。オープンレジデンスでは、訪れた参加者がアーティストのパフォーマンスや作品の展示を自由に見学しながら、アーティストとの直接の交流を楽しむ光景も見られた。
東京と香港を拠点に活動する写真家の花坊さんは、「温海(ぬくみ)」をテーマに同館の従業員や施設内外を撮影した。従業員が着用する制服のリニューアルや施設の改装予定を聞いた花坊さんは「働いている人やすてきな場所を写真に残したい」と、撮影に臨んだという。普段はファッション誌の撮影をするという花坊さんは、同館が提供しているレンタルドレスにも着目。衣装をまとった従業員をモデルに仕立てた写真も撮影した。花坊さんは「熱海には昔から芸術家や作家らが拠点を構えていたこともあり、皆さんがアートに対して懐が深く、適度な距離感で温かく接してくれた。熱海の芸術に対する歴史を感じた」と話す。
静岡県出身で「未来芸術家」の遠藤一郎さんは、凧(たこ)に夢を書いて空に揚げるワークショップを行う。第1タームの後半でもワークショップを行い、参加した親子と笑顔で交流した。3日はあいにくの荒天により凧揚げは中止となったが、館内にはワークショップに参加した人たちの夢を書いた連凧が掲げられ、館内を彩った。
サウンドアーティストの鈴木昭男さんとダンサー・アーティストの宮北裕美さんは、「波のうつし」をテーマに同館の「サロン・ド・錦鱗」でパフォーマンスを披露した。鈴木さんが出す音と宮北さんが同館のある錦ヶ浦の浜で採取した石を打つ音とを合わせたパフォーマンスに、参加者は耳を傾けて聴き入った。同館のロイヤルウィングでは、2人の絵画作品の展示も行われている。
4人のアーティストに加え、民俗工芸アーティストの中谷健一さんの作品も展示された。中谷さんはSNSで話題となった作品「グリッチタヌキ」や一風変わった熊の彫刻などを手掛ける。「PROJECT ATAMI」のプロジェクトパートナーに、実験空間「ハコスコカフェ」(伊豆山)を経営する「ハコスコ」がキュレーション枠として参画することが決まっており、そのプレ企画として中谷さんの作品が展示された。
第3タームは7月~8月に行われ、映像作家や書家らが同館に滞在して作品の制作に臨む。次回のオープンレジデンスは9月を予定している。
4日もプログラムを予定していたが、3日に発生した伊豆山地区の土砂災害を考慮して中止となった。その4日には急遽、同プロジェクトに参加しているアーティストらのチャリティーTシャツの販売を開始。売上の全額を熱海市に寄付するとしている。「PROJECT ATAMI」のホームページから購入できる。