熱海のホテルニューアカオ(熱海市熱海)で10月16日・17日、アーティストがホテルに滞在しながら制作した作品を見学できる「AKAO OPEN RESIDENCA #3」が開かれた。
熱海の魅力をアートで再発見するプロジェクト「PROJECT ATAMI」の一環。ホテルニューアカオと東方文化支援財団が3月に始めたプログラムで、アーティストは同館に1~2カ月間滞在し、制作した作品を発表して見学者と交流を図る。
今回の第3タームには5人のアーティストが参加し、滞在中に制作した作品やパフォーマンスを披露した。
書家の華雪(かせつ)さんは、同館の象徴的な存在である「松の木」に着目。長さの異なる2枚の紙に「木」の字を描いた。崖全体を松の根がうねって張り巡らされているイメージを表現したという。華雪さんは「滞在中に、ホテルの創業者の思いが松には込められていることを知った。ホテルの歴史を見てきた力強い松の木を表現した」と話す。
第2タームから参加している写真家の花坊さんは、同じく「翠巒(すいらん)の松」をテーマに同館の絵はがきや人物、風景の写真をコラージュした作品を公開した。同館が建つ前の風景なども使い、同館の歴史や豊かな自然を巧みに表現した。熱海在住の人を被写体に、同館の貸衣装を着用した写真も展示する。
渡辺慎二郎さんは熱海の植物に着目し、「浸る植物」「なびく植物」をテーマに夜の植物を撮影した写真を発表した。渡辺さんは「熱海は気候が良いので、植物の枝葉が大きく広がり伸び伸びしていた。良い環境に浸っている夜の植物を撮影した」と話す。同館周辺や梅園などで撮影に臨んだ。
ロックバンド「never young beach」の安部勇磨さんは、同館の屋外エリアでミュージックビデオを撮影し、作品を上映した。映像作品にはセミの鳴き声や波の音をそのまま取り入れ、熱海の自然が奏でる音との融合を表現した。
グラフィックアーティストの河野未彩さんは、見る角度によって色が変わるレンチキュラー作品を完成させた。滞在中に眺めた水平線の景色を3枚の作品に表現した。河野さんは「1枚の作品に見る角度によって変化する朝・昼・夜を表現した。この作品においては見る側がタイムラインを握っている」と説明。熱海の雰囲気や同館の建物にも影響を受けたと言い、アートディレクターとして関わり館内で撮影した音楽ユニット「チャラン・ポ・ランタン」のビジュアル作品も展示し、見学者の目を引いた。
11月16日に始まる、熱海市内各所にアーティストの作品を展示するイベント「ATAMI ART GRANT」でも一部作品を展示する予定。