ダイダイ酢を使った新商品「伊豆ピクルス」が12月10日、リリースされた。製造はシトライカンパニー(熱海市西熱海)。
ピクルス液のベースは、熱海で特産品のダイダイを栽培する農家で同カンパニー代表の岡野谷伸一郎さんが熱海・多賀地区の自社農園で栽培・収穫したダイダイ果汁。伊豆や静岡県産の野菜を漬け込む。構想に1年4カ月かけて開発に着手。着手から8カ月かけて商品化にこぎ着けた。
同社は、熱海市内の飲食店で提供されているダイダイサワー「あたみ割り」に使うダイダイ果汁や「だいだいマーマレード」、ダイダイの果皮を蒸留して作る「だいだい精油」の製造・販売も手掛けるなど、ダイダイの6次産業化に積極的に取り組んできた。新商品の開発について、岡野谷さんは「ダイダイは正月飾りに使われるほかはあまり使い道がなく、余って捨てられることも多かった。規格外などの理由で市場に流通しない野菜もある。SDGsへの取り組みで生産物を捨てない努力をしてきた当社の手でダイダイや野菜に新たな価値を与えたいと取り組んだ」と説明する。
開発に当たっては、市内の飲食店や宿泊施設の事業者らからの意見を取り入れながら試作を繰り返したという。「ダイダイの程よい酸味が野菜のうま味を引き立てる理想の味に仕上がった」と岡野谷さん。瓶詰めでは、「販売時に棚に並べた際に、つい手に取りたくなるような見た目の美しさにもこだわった」とも。12月下旬頃から、市内の観光施設と宿泊施設で販売する計画。
商品の製造では、同社敷地内に食品製造のための工房を新たに開設。県内の農業高校出身の荻原穂花さんを従業員として加え収穫から製造までの社内体制も強化した。
販売する商品は5種類で、ダイダイ酢を使った洋風テイストの「キュウリ&パプリカ」「ダイコン&ニンジン」「ミックス野菜」、ダイダイ酢と黒酢を使った中華風の「きのこミックス」「うずらの卵&月桂樹」(以上972円)。今後は、季節の野菜を使う新たな商品の開発も予定する。
岡野谷さんは「今後、新たな商品開発にも力を入れながら、外部機関の協力を得てダイダイの効能についてのエビデンスや科学的根拠の追究も行っていく。ダイダイを『熱海の宝』から『静岡の宝』に成長させ、全国にダイダイの魅力を発信していきたい」と意欲を見せる。