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「熱海・伊豆山に再びにぎわいを」 クラファンに地元店も返礼品提供で協力

魚久の高橋一平さんとテンカラセン代表の高橋一美さん(左から)

魚久の高橋一平さんとテンカラセン代表の高橋一美さん(左から)

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 熱海・伊豆山の復興支援に取り組むボランティア団体「テンカラセン」が立ち上げたクラウドファンディングにこのほど、地元・伊豆山の鮮魚店と精肉店が返礼品を追加し、支援を呼び掛けている。

テレビのグルメ番組でも紹介される下総屋精肉店

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 昨年7月3日に発生した大規模土石流により被災した弁当店「喜余味」(熱海市伊豆山)の高橋一美さんを中心に設立した同団体。同団体のメンバーがボランティア活動を進めていく中で、高齢化・独居化が著しい地区の現状を目の当たりにしたという。プロジェクトを立ち上げた背景を高橋さんは「災害の当初は、どこの誰が避難しているのかいないのかや、どこの誰に物資を持って行ったらいいのかを誰も正確に把握していなかった。伊豆山を復興していくに当たり、昔のような日常的に地域の人たちが集まって、顔を合わせられるような場所が必要だと感じた」と説明する。

 プロジェクトでは、伊豆山の「浜会館」と呼ばれる場所にコミュニティーカフェの開設を目指す。12月16日にクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で、カフェの開設資金を集める呼び掛けを始め、1月17日時点で157人から270万円以上の寄付を集めている。伊豆山の被災した店を応援するリターン(=返礼品)は、早々に用意した数を超えたため、急きょ、鮮魚店「魚久」と精肉店「下総屋精肉店」に依頼して追加数の準備を整えた。

 返礼品を提供する両店は、土石流の直接的な被害は免れたものの、水道が止まったり、前面道路が寸断されたりするなどして、1カ月以上営業できない状態が続いた。現在は通常営業に戻っているものの、被災して家を失った常連客も多く、被災前のような住民の交流を取り戻したいという思いは大きい。

 下総屋精肉店の熊倉光雄さんは「特に伊豆山の浜地区は若い人も少なく、高橋さんのように活動してくれる人がいることで助かっている」と話す。「浜地区も昔は商店街に店や銀行などがあり、観光客も住民も多かった。本来は魅力的な場所。今後、カフェができることで活性化し、また外から人が集まってくる場所になってほしい」とも。

 魚久の高橋一平さんは「今まで観光客に伊豆山でお薦めの場所を聞かれても、紹介できる場所が少なかった。カフェが観光客と地元の人とをつなぐような場所になれば」と期待を寄せる。

 下総屋精肉店はテレビのグルメ番組でも紹介される自家製チャーシューなど「お肉セット」を、魚久は季節の魚介類の切り身や干物の「お魚セット」を、それぞれ返礼品として追加で用意した。

 高橋一美さんは「伊豆山の復興の先を見据えて、外から人が集まり、観光客と地元の人が交流できる地域にしていきたい」と話す。バブル期までの伊豆山地区は国内有数の温泉地として栄えていた。今でも伊豆山神社や走り湯などの観光スポットを訪れる観光客はおり、温泉旅館も多くの利用がある。しかし、「誰もが気軽に立ち寄れる店が無い」と高橋さんは惜しむ。

 伊豆山ゆかりの源頼朝と北条政子を題材にしたNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送も始まり、注目を集める地域でもあることから、高橋さんは「歴史的にも伊豆山は由緒ある場所。伊豆山で歴史や文化、景色を楽しんでもらい、活気を取り戻していきたいので、皆さんの力を貸してもらえれば」と呼び掛ける。

 支援金はクラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で1月22日まで受け付ける。カフェのオープンは3月を予定する。

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