熱海市内の空き物件を視察する「賃貸リノベ物件ツアー&まちあるき」イベントが12月12日、熱海市街地を中心に行われた。企画・運営はマチモリ不動産(熱海市銀座町)。
同イベントは今回が4回目。これまでの参加者は、熱海への移住を検討している人、熱海で事業を始めたい人、既に熱海に移住して街のことを知りたい人が多いという。今回も熱海に移住したばかりの人やまちづくりに関心がある人が参加し、2時間ほどかけて物件を見て回った。
主催した同社の三好明社長は「熱海は空き家率が52.7%あり、全国でもトップクラス。それにもかかわらず、住みたいと思える賃貸物件が少ない。人材不足にあえぐ観光事業者にとっても、採用した人の住む場所が無いことは経営課題の一つ。熱海は2拠点生活や移住先として注目されているからこそ、その住環境を整える必要性を感じた」と取り組みの背景を説明する。
「老朽化した物件をリノベーションしてから客付けをするのではなく、住む人を探して、その人に合わせて改装する。それによって投資対効果が高まり、入居者の満足度も上がる。実際にリノベーションした物件、リノベーション中の物件、これからリノベーションする物件をそれぞれ見学していただくことで、イメージを持ってもらいやすい」とも。
かつて空きテナントが多かった熱海銀座商店街だが、現在、1階は全て埋まり、今後は2階以上の空室対策に目が向けられている。同商店街から離れた地域では、1階でも「テナント募集」「入居者募集」の看板を掲げたビルやアパートも少なくない。三好さんも「銀座商店街だけでなく、より広い範囲でまちづくりを展開していくステージに入っている」と説明する。
今回視察した物件の一つは、1階に飲食店が入居した築47年の3階建てアパート。渚町という古くからの繁華街にあり、海まで徒歩1分の立地。昨年まで部屋の7割が空室で、ビルオーナーとしても古くて使いにくい建物を今後どうしていくべきか悩んでいた物件だったという。三好さんは「その中の一部屋は海を見渡せる物件だった。入居希望者を見つけ、その人の希望や生活スタイルに合わせた改装をビルオーナーに提案し、リノベーションが実現した」と言う。
視察ツアーに参加した平島正さんは昨年、東京から熱海に移住した。「アートに関わるまちおこしをしたくて熱海に移住した。住みづらさを解決できれば、まだまだ発展の余地がある」と期待を寄せる。
三好さんは「物件の視察だけでなく、おいしい店、街の歴史、お薦めの過ごし方なども紹介して、熱海の魅力や生活をリアルに感じてもらうことも視察ツアーの目的。視察ツアーによって、自分のライフスタイルを実現したいと思える人の居住、熱海に関わる関係人口の増加につなげることができれば」と意気込みを見せる。
同社は今後も毎月、同ツアーを開催予定。熱海市内の「廃虚ツアー」「別荘ツアー」も不定期で開いている。