熱海の「温泉湯宿 大成館」(熱海市下多賀)が12月10日、ライブキッチンダイニング「網代木(あじろぎ)」をリニューアルオープンした。
同館社長・駒嶺洋さんの祖父・定七さんが1940(昭和15)年、釣り宿として創業。定七さんは都内で染色工場を経営していたが、戦争で工場が消失したことをきっかけに本格的に同館の拡大に踏み出したという。釣りが趣味で「大鯛(たい)釣り」として知られた定七さんは妻・ふでさんと共に宿を盛り立てた。
駒嶺社長は「目の前にある網代漁港であがる地魚をふんだんに使った料理、熱海の海や山、市街地を見渡す景色がこだわりの宿。祖父が掘り当てた源泉を引き込んだかけ流しの6つの風呂も売りにしている」と話す。
今回のダイニングスペースのリニューアルについて、「ライブキッチンにするのは夢だった」という駒嶺社長。「部屋食は提供するのに多少でも時間がかかってしまう。出来たての料理をお客さまに楽しんでもらえるようにしたかった」と話す。
約160平方メートルある和室の大広間を、和モダンをコンセプトにしたダイニングに全面リニューアルした。中央に鉄板を備えたライブキッチンを設け、料理人が客の目の前で肉を焼いたり、魚介類をさばいたりして料理を提供できるようにした。新たにバーカウンターも設け、地酒を中心に「こだわり」の日本酒を多くそろえる。
これまでは海側に面する場所にもかかわらず景色を望めなかったため、壁を撤去して全面窓ガラスにしたことで、海や山を広く望めるダイニングになった。「漁船が出港していく光景や熱海の市街地など、網代らしい風景が楽しめるようになった」と笑顔を見せる。
現在は宿泊客だけが利用できるが、今後は予約制で宿泊客以外も受け入れる予定だという。駒嶺社長は「源泉を使った温泉、景色、そしてライブ感ある料理と三拍子そろった宿が完成した。自然が残る静かな網代でのんびりと過ごしてもらえる場所になれれば」と期待を込める。