熱海のスナック「亜(あ)」(熱海市中央町)が3月23日から5日間、開業45周年イベントを開いた。
遊郭だったという名残を見せる「スナック亜」の建物(関連写真2枚)
1978(昭和53)年3月に、現在のママ・佐保公己枝さんの母・しずえさんがオープンした同店。熱海出身で83歳のしずえさんは、スナックを始める前は事務員として働き、繁華街の飲食店から集金する業務などに当たっていたという。しずえさんは「熱海の繁華街がとてもにぎやかだった時代。芸者の出入りも多く、どの店も繁盛していた」と当時を振り返る。現在の「亜」の場所にあったバーに客としてよく来ていたというしずえさんは、そのバーが閉店すると聞き、店を引き継ぐことを決意。バーの店名「亜」はそのまま残し、新たに「スナック亜」を開業した。
「何となく45年が過ぎた」としずえさん。「東京からもわざわざお客さまが来てくれていたし、地元の常連もよく通ってくれた。景気がよかったころは、この近辺にも芸者が店を出していたが、今ではほとんどなくなった。うちはありがたいことに残ってこられた」と懐かしむ。しずえさんを支えた常連客は高齢や既に亡くなっている人も多く、現在の常連客は15年前から店に立つ公己枝さんを慕って来店する客が多い。日曜のみ、しずえさんが「現役ママ」として店に立つ。
45周年に当たり、3月23日から27日まで、常連客向けの周年イベントを開いた。50周年まで5年に迫ったタイミングでの開催について、公己枝さんは「開店から1度も周年イベントは開いたことがなかった。コロナも落ち着き、お客さまから背中を押されたこともあり、高齢の母のことも考えて開催した」と話す。イベントには顔なじみの常連客がカウンターを埋め、しずえさんと公己枝さんを祝う人で店内に笑顔があふれた。
「亜」の入るビルは、昔は遊郭だったという建物で、外観にはその名残を見せる。店内は2年ほど前、和モダンのしつらえにリニューアルしたばかり。公己枝さんが店に立つようになってからカラオケは廃止してお酒と会話を楽しむ店に変えた。2人とも調理師免許を持ち、手づくりのお通しにもこだわる。公己枝さんは「母の作る温泉卵が人気」と胸を張る。
50周年に向けて、「母も元気でできる限り現役でいてほしい」と公己枝さん。しずえさんは「5年後はどうなるかわからない。遺影も用意してある。今は娘にお客さまがたくさんついてくれていてありがたい。娘が一生懸命やってくれれば安心」と笑顔を見せる。
営業時間は20時~翌1時。