4月で開業70周年を迎えた熱海のしゃぶしゃぶ店「食事処(どころ) ふくや」(熱海市田原本町)が4月13日、「70周年記念限定セット」の提供を始める。
70周年セットは「和豚もちぶた しゃぶセット」の肉を10パーセント増量(関連画像4枚)
1935(昭和10)年に熱海・伊豆山で理髪店として創業。熱海駅前の仲見世通り商店街が完成したのに合わせて同商店街に移転した後の1953(昭和28)年、現在の場所に温泉宿「ふくや旅館」を開業した。
多くの観光客を受け入れてきたが2000(平成12)年夏に閉館し、現在の「食事処 ふくや」に業態を転換した。現店主で、当時は理容師だった三枝智さんも、父・俊雄さんが切り盛りする同店を手伝うようになったという。
「バブル期の頃は、観光地で髪を切る習慣もあり、多くの観光客と地元客で理髪店は繁盛した。その後は観光客も減り、熱海の高齢化や人口減少の影響を感じていた」と三枝さん。「旅館を飲食店に変えるタイミングで、現在の看板メニューで、旅館の人気料理だった『和豚もちぶた』のしゃぶしゃぶに特化した店にした」と振り返る。
70周年記念セットは、一番人気という「和豚もちぶた しゃぶセット」の肉を10パーセント増量。豊富にそろう一品料理の中でも人気のある和豚もちぶたを使った自家製「クリームコロッケ」を付けて一人前を3,333円で提供する。
店は、入り口正面に現れる広い階段や客室を生かして改装した個室席などに旅館だった名残を感じさせる造りとなっている。一方で、個室ならではのオペレーションの難しさに加え、昨年1月に長く店を支えた俊雄さんが他界した。
「深刻な人手不足とコロナの影響も重なり、何かしらの対策が必要になった」と三枝さん。働く従業員の負荷を減らそうと、昨年秋ごろからタッチパネル式の卓上オーダーシステムの導入を検討。ホームページの更新やSNSの運用を自ら行うなど、デジタル技術の活用に抵抗感はなかったという三枝さんだが、「当初は高齢の従業員が使いこなせるか、お客さまが受け入れてくれるか心配だった」と話す。導入から2カ月たち、三枝さんは「実際に始めてみると、働く高齢の母も『楽になった』と喜び、お客さまも難なく使えている。運営しやすくなった」と笑顔を見せる。
三枝さんは「地域のお客さま、事業者、観光客に支えられ、店を営んでこられたことに感謝している。タッチパネルシステムもいろいろな人にアドバイスをもらって導入した。これからも新しいことに挑戦する気持ちを大事にしたい」と話す。
営業時間は17時30分~22時。月曜定休。記念セットの販売は4月23日まで。