古民家貸し切り宿「墨荘(ぼくそう)」(熱海市伊豆山)が12月26日、熱海・稲村地区にオープンした。
民泊サポート事業やカフェ運営を手がける「いとへん」(湯河原町)が運営する宿泊施設。一棟貸貸し切りで利用してもらう。同社にとって、熱海と湯河原を合わせて5軒目の施設となる。
「墨荘」が使う建物の建築時期は昭和初期とされ、実業家・正力松太郎が1942(昭和17)年から1960(昭和35)年まで所有していた。その後、別の所有者の手に渡り、現在の所有者が入手してからは主に別荘として使ってきたという。建築家・前川國男が設計して国指定登録有形文化財に登録されている建物を使う施設で同社が管理している「稲村ハウス」に隣接する。
「墨荘」オープンまでの経緯について、「いとへん」の清水絢子さんは「3年ほど前、稲村ハウスを管理している時に、墨荘を大切に使っている現在の所有者と出会った。その時には貸し出す意向がなかったようだが、昨年7月に再会した時に宿泊施設として活用しながら価値ある建物を残していくことを快諾してもらった」と話す。
活用に当たっては、昨年9月から約3カ月かけて修繕やインフラ整備、建物を囲む木の伐採などを進めてきた。歴史ある建物をできる限り生かしながら、使いやすい古民家宿にリニューアルしたという。
土地の面積は289平方メートル。建物の面積は113平方メートル。平家建てで、寝室3部屋や土間のあるリビングルーム、キッチンのほか、屋根裏部屋を備える。それぞれの部屋から相模灘を望める。
「今ある物を大切に生かそうとすることで家も息を吹き返した。次世代に受け継がれていけば」と清水さん。同じく「いとへん」の中嶋純子さんは「熱海に限らず価値はあるが埋もれている資源はたくさんある。活用し保存していくことで、地域の魅力を伝えていければ」と話す。「墨荘でしか体験できない特別な時間を多くの人に味わってほしい」とも。
宿泊定員は12人。