伊豆霊場振興会が6月25日、伊豆八十八カ所霊場を熱海発着で参拝する「熱海御朱印物語」を公開した。現在、専用の御朱印帳などを制作するプロジェクトに取り組んでいる。
プロジェクトを立ち上げたのは、伊豆霊場振興会の4代目会長を務め、宿泊事業者向けのウェブコンサルティングを行うサイトプラス(三島市)代表の遠藤貴光さん。三島出身の遠藤さんは、17年前の33歳の時にIT関連会社を起業。その後、四国八十八カ所霊場巡りをしたことがきっかけで、2014(平成26)年に同会の会長に就任した。
伊豆八十八カ所霊場は、四国などと並び江戸時代から親しまれ、明治の頃までは盛んに巡礼が行われてきたという。遠藤さんは「近年では同霊場の巡礼をする人はほとんど無く、忘れ去られたような存在だった。一方で、愛知県の知多半島には知多四国霊場があり、毎年5万人が参拝していることを知った」と話す。遠藤さんは2014年、実際に同霊場を視察。毎月催行する巡礼イベントに毎回3000人以上の参拝者がいることに驚いたという。「自然環境も良く、首都圏からの交通の便も良い伊豆半島であれば、もっと多くの人が集まり、伊豆八十八カ所霊場を再興できる」と考え、同霊場を参拝してもらう企画を立ち上げた。
遠藤さんは自らの足で21日間かけて同霊場を巡り、併せて寺院の住職らに協力を仰いで回ったという。住職や地域の協力もあり、活動を始めて3年目には年間1000人程度の巡礼者を確認できたものの、「課題もあった」と遠藤さん。「お遍路というと、『ざんげ』『作法が難しい』というイメージがあった。より気軽に参拝できる方法を模索してきた中で、『御朱印』をもらうという形にリメークすることにした」と説明する。「東京から日帰りでも楽しむことができ、徒歩と熱海駅を発着する公共交通機関で参拝するルートを新しく作った。徒歩やバスで移動することで、伊豆の自然や人の温かさにも触れてもらいたい」とも。
リメーク版では、全長444キロメートルある同霊場の巡礼道を20コースに分け、「20話」の物語風コースを設定。全て熱海発着の日帰りコースだが、宿泊することで各地の観光と組み合わせることもできる。各コースでは、公共交通機関の時刻や徒歩移動時間、参拝時間まで細かく計算している。リメークに合わせ、専用の御朱印帳を制作するためのクラウドファンディング(CF)も立ち上げた。CFによる資金で作る専用の御朱印帳は、既に各寺院の本尊が印刷されており、寺院ではそのページに御朱印をもらうという仕組み。遠藤さんは「結婚や起業など人生の節目を迎えたり、新たなことを始めたりする時に巡礼してほしい。やり切る覚悟と、終えた時の達成感を味わってもらえれば。伊豆は宿泊や食事する場所など巡礼するに当たってのインフラが整っているので、温泉や自然も堪能しながら若い人にも楽しんでもらいたい」と期待を寄せる。
CFのリターンには、熱海御朱印物語の専用御朱印帳(2,400円)、オリジナル手ぬぐい(1,100円)の2種類を用意。集まった資金は御朱印帳のほか、手ぬぐいの制作費にも充てる。現在、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で協力を呼び掛けている。目標額は88万円。7月31日まで。