特集「熱海・スナックと私」では、市内の経営者にお薦めのスナックを紹介してもらいながら、これまでの人生やこれからの経営ビジョンなどを伺います。聞き手は、熱海経済新聞副編集長でボイストレーナー「たーなー先生」としても活動する田中直人です。
2回目の今回は前回に続き、江戸時代から150年以上続く老舗干物店「釜鶴」5代目の二見一輝瑠(ひかる)さんです。1978(昭和53)年生まれで、現在46歳。熱海商工会議所青年部会長、熱海市観光協会理事、熱海富士後援会事務局長などを務める二見さん。家族との思い出や、これまでの歩み、会社経営、今後の熱海についてなど、気になる話を伺いました。
前回の記事
【熱海・スナックと私 vol.1】 「釜鶴」社長・二見一輝瑠さん(前編:スナック「キュウティー」)
――2軒目に選んだスナック「和み場ar 侑」について、魅力などを教えてください。
二見 地元客が多いので、一人でもグループでも気軽に入れるところです。スナックでは珍しい、生ビールを提供してくれるのもうれしいですね。あとは、やはりママの笑顔と人柄です。
釜鶴の二見さん(中央)と聞き手の田中(右)
――前回は高校時代までの話を伺いました。続きを聞かせてください。
二見 高校で印象に残っているのは、バスケ部のキャプテンをやっていたことです。チャレンジしたくてキャプテンを務めたのだと思いますが、振り返るとやはりリーダーシップを取ることに憧れがありました。
――大学進学の話を教えてください。
二見 高校2年まで理系だったのですが、高校3年で文転しました。大学生だった一番上の兄は、高校の卒業文集で「店は弟に任せる」と書いていました。2番目の兄は、2浪していたので父から「勉強しないなら自衛隊に行け」と言われていました。となると、店は自分が継ぐのかと思い始めて、文転して経営学部や商学部に行った方が良いと考えました。
――お父さんとは店の継承について話したことはあったのですか。
二見 父から相談されたり、継げと言われたりしたことはなかったと思います。兄がやらないなら自分がやってもいいということは言ったかもしれません。
大学は、現役で明治大学に入学しました。その時には店を継ぐことは決めていました。
釜鶴の店頭で
――大学時代はどのように過ごしましたか。
二見 基本的に1、2年生の時は遊んでいました。2年の時には民俗音楽のゼミに入りました。兄が音楽をやっていたので、自分も音楽に興味があったからだと思います。
1年だけそのゼミに入り、さすがに勉強しないといけないと思い、3年生になる時にマーケティングのゼミに入りました。そのゼミは少し変わっていて、授業はスーツを着用しなければいけませんでした。伝統のあるゼミで、先輩からは社会人になった時のためにスーツの着方をしっかりするようにと、社会人になる上で大切なことも学びました。
――ゼミで勉強したことで現在に生きていることはありますか。
二見 グループの論文のテーマが「商店街の活性化」でした。そのような勉強をしておいた方がいいだろうと思って論文のテーマに選んだと思います。
卒業論文のテーマは「インターナルマーケティング」でした。従業員の満足度を上げることで業績を良くしようというマーケティングの考え方です。最近では当たり前の考え方かもしれませんが、当時の先生が、その頃から提唱していることでした。昔はパワハラが当然のような時代だったのが、今では従業員に伴走して寄り添っていく時代になった。そういうことを当時から考えていたのかもしれません。
侑のつまみと酒
――大学卒業後は、どちらに就職したのですか。
二見 就職氷河期でしたが、ゼミの先輩は就職率100%でした。厳しいゼミだったので、それが生きていたのだと思います。最初は、大手ではなくベンチャー企業に入って何でもやらされながら3年くらい勉強できたらと思っていました。でも、釜鶴の工場長があと1年で引退するから1年で帰ってこいという話になりました。当時、就職活動をしていて、志望するベンチャー企業の社長面接まで進んでいたのですが、それもやめざるを得ませんでした。
ですので、築地市場と銀座の高級ブティックで、それぞれ4カ月ほどアルバイトをしました。客単価約10万円のブティックだったので、高級な物を買いに来るお客さまへの接客を勉強しました。時間もなかったので正社員としては就職せず、1年間でいろいろなことを経験しようと思っていました。
社会人経験がないので、会社経営についてどうしたらいいのか全く分からないまま帰ってきたという感じです。
――ちなみに学生時代は何のアルバイトを経験したのですか。
二見 新宿で弁当のデリバリーと、神保町の中古ビデオ店でアルバイトをしました。バイトを始めて気づいたのは、そのビデオ店は7割ほどがアダルトものだったので驚きました。
――ここまでありがとうございました。では続きは次の店で伺いましょう。次回、後編では二見さんの現在から今後の展望についての話を伺います。
侑のママ・手塚裕子さん
二見さんお薦めのスナック「和み場ar 侑」について
開業 2015(平成27)年9月
ママ 手塚裕子さん
席数 カウンター7席、テーブル6席
営業時間 20時~翌1時
定休日 日曜
住所 熱海市中央町6-1
電話 0557-82-0025
神奈川県出身のママ・手塚さんが経営する「侑」。9月で10周年を迎える同店は、9割が地元客とのことで、熱海で人気のスナックの一つです。コンパニオンの派遣事業も手がけています。
階段を上った先にあるのが「侑」
「釜鶴」過去の記事
熱海の「釜鶴」でサクラマスの「干物フレーク」 インターン生が開発
熱海の干物店「釜鶴」が干物開き教室 保育園児向けに毎年続ける
熱海の老舗干物店が新店「かまなり」 干物創作料理を8時から提供
聞き手:田中直人