熱海が現在、特に力を入れているのが「ワーケーション」です。聞き慣れた言葉になってきましたが、ワーケーションとはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。コロナ禍を挟んでも、この数年は順調に発展を続ける観光地としての熱海が、なぜ今、ワーケーションに力を入れているのでしょうか? 数回に分けて、熱海でのワーケーションの動きやワーケーション施設を紹介していきます。
これまでに、熱海の特徴的なワーケーション施設として、「キュレーションホテル桃山雅苑(ももやまがえん)」、一棟貸しゲストハウス「熱海・網代の風」を拠点に開催されたワーケーションモデルツアーの様子、リゾートホテル「熱海パールスターホテル」が始めたワーケーションプランなどをリポートしました。今回は、宿泊施設「熱海シーサイドスパ&リゾート」が始めた本格的なリゾート体験を手頃な価格で提供するワーケーションへの取り組みを紹介します。
これまでの記事
【熱海でワーケーション vol.1】熱海が目指す“新しい滞在”の形
【熱海でワーケーション vol.2】まさに“泊まる美術館”「キュレーションホテル桃山雅苑」
【熱海でワーケーション vol.3】ゲストハウス「熱海・網代の風」を拠点にワーケーションモデルツアー
【熱海でワーケーション vol.4】課題先進地の熱海が企業研修のフィールドに
【熱海でワーケーション vol.5】熱海パースルターホテルでリゾートワーケーション
「熱海シーサイドスパ&リゾート」は、熱海サンビーチ前に立つ全88室の大型リゾートホテルです。国道135号沿いにあり、JR熱海駅からも徒歩15分ほどと、アクセス性の良さが特徴の一つ。目の前の熱海湾に打ち上がる海上花火、相模灘の景色、海に浮かぶ初島などオーシャンビューの景観を楽しむこともできます。
ホテルの目の前に広がる相模灘と熱海サンビーチ
同ホテルを運営するのは、富士急グループの「富士急マリンリゾート」。同社は、熱海港と初島港を結ぶ定期客船の運航も行っています。富士急グループは、遊園地「富士急ハイランド」、アウトドア施設「PICA(ピカ)」、箱根芦ノ湖の遊覧船の運営を行うなど、富士山周辺エリアで運輸、観光、不動産業などを展開しています。
熱海の離島・初島を結ぶ定期客船を運航
熱海エリアでは、同ホテルと定期客船のほか、初島のリゾート施設「PICA初島」、熱海市と函南町にまたがる十国峠のケーブルカーとレストハウス、グランピング施設「THE GLAMPING 箱根十国峠」の運営をグループで行っています。
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3月、同ホテルとしては初めて「ワーケーション」をテーマにした宿泊プランを発売しました。同ホテル支配人の甲賀伸治さんは「ホテル内の充実した設備と熱海エリアで運営する富士急グループの施設を生かしたワーケーションをアピールしたい」と話します。
同ホテルの館内には、客室やレストランのほか、自家源泉の大浴場や源泉かけ流しの露天風呂、サウナ、岩盤浴、エステなど、リゾートステイをリラックスして過ごしてもらう設備を整えています。若者から年配まで幅広い客層に利用されるホテルということですが、コストを抑えたい女性一人旅に合わせた「女性専用キャビンルーム」素泊まりプラン、岩盤浴プラン、エステ付きプランなど、女性や若者向けのプランも人気だそうです。
海を望む自家源泉の大浴場
最近では、コロナ禍で減少していた団体利用も戻ってきているそうです。「コロナ禍以降は個人客をメインターゲットとしたリゾートホテルとして営業を行っていましたが、最近は小グループでの利用も再び増えてきています。国内の働き方の変化や熱海市としても数年前からワーケーション誘致を積極的に行っていることなどが、実際の集客に表れているのだと思います」と甲賀支配人。
「当館には会議室を備えていますが、Wi-Fiなどの環境は整えたものの、会議室の存在を前面にアピールしていませんでした。新たに10~20人程度の、ベンチャー企業やIT系企業に活用していただけるワーケーションプランを手頃な価格で提供することで、平日利用の促進につなげていきたいと考えています」とも。
館内にある会議室
今回、同ホテルが始めたワーケーションプランは、1泊2食付きプランに会議室利用の料金が含まれた宿泊プランです。平日の基本料金は、2人1室で1人当たり1万6,000円、4人1室で同1万4,000円。
会議室の広さは約80平方メートル。コの字やスクール形式で10人ほど、シアター形式で20人ほどの収容が可能です。プロジェクター、スクリーン、演台、ホワイトボード、空気清浄機、Wi-Fi環境などを備えます。会議室利用者専用のトイレも併設。窓からは海を望むこともできます。
プロジェクターやホワイトボードなどの設備も備えた会議室
館内のレストランには、20~30人ほどが入れる個室も備えています。「会議室で会議や研修が終わったら、レストランの個室を貸し切って食事をしながら懇親を深めることもできます。周りを気にすることなく、大人数でもプライベートな時間を過ごしていただけます。懇親会以外にも、当ホテル自慢の自家源泉大浴場や館内施設を楽しんでほしい」と話します。
レストランの個室は大人数での宴会利用も可能
館内のレストランでビュッフェを楽しむことも
甲賀支配人は「館内にとどまるだけでなく、初島などのグループ施設でのアクティビティーと連動したワーケーションもお薦め」と言います。初島へは、熱海港から定期客船で約30分。グループ施設のPICA初島には、宿泊施設だけでなく、日帰りでも楽しめる屋外プール(夏季限定)、アドベンチャー施設「SARUTOBI(サルトビ)」などがあります。漁師が経営する食堂街で楽しむ海鮮料理、PICA初島内のアジアンガーデンで楽しむ海鮮バーベキューなど、「島グルメ」も初島の魅力の一つ。定期客船の往復乗船券とPICA初島内の「SARUTOBI」や海泉浴「島の湯」などで使用できるアクティビティー利用券をセットでも販売しているそうです。
グループ施設「PICA初島」のある離島・初島
「アジアンガーデン」でリゾート気分に
PICA初島の海泉浴「島の湯」
今後、初島内を活用したアウトドア企業研修プランも予定しているとのことです。「既に他エリアのPICAではアウトドア施設を使った企業向けの研修プログラムの実績があります。参加者が与えられたプログラムをクリアしていくことで、教育につながる内容を想定しています」と話します。「当ホテルを滞在拠点として、熱海のリゾートライフとワーケーションのハイブリット体験を富士急グループの非日常的な空間を通して体感していただきたい」とも。
アドベンチャー施設「SARUTOBI」
「熱海シーサイドスパ&リゾート」ワーケーションプラン