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【熱海でワーケーション vol.3】 ゲストハウス「熱海・網代の風」を拠点にワーケーションモデルツアー

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 熱海が現在、特に力を入れているのが「ワーケーション」です。聞き慣れた言葉になってきましたが、ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。コロナ禍を挟んでも、この数年は順調に発展を続ける観光地としての熱海が、なぜ今、ワーケーションに力を入れているのでしょうか? 数回に分けて、熱海でのワーケーションの動きやワーケーション施設を紹介していきます。

 前回は、熱海のワーケーションに適した施設の中でも特徴的な施設の一つ「キュレーションホテル桃山雅苑(ももやまがえん)」を紹介しました。今回は、一棟貸しゲストハウス「熱海・網代の風」を拠点に開催されたワーケーションモデルツアーの様子をリポートします。

これまでの記事

【熱海でワーケーション vol.1】熱海が目指す“新しい滞在”の形

【熱海でワーケーション vol.2】まさに“泊まる美術館”「キュレーションホテル桃山雅苑」

2023年8月に開業したゲストハウス「網代の風」

 ゲストハウス「網代の風」は地元企業の従業員寮だった建物を改装して2023年8月に開業しました。オーナーの小浦洋生さんは、都内で都市計画やまちづくりに関わる会社に勤務しながら、自身でも不動産運用の会社を立ち上げて「網代の風」の経営も始めました。

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 同施設は、網代駅から徒歩15分ほど、網代港の目の前にあります。実家は熊本・天草で漁師をしていたという小浦さん。漁師町の網代の景色に生まれ育った天草を重ね、網代の活性化にも一役買いたいと、当初予定していた貸家ではなくゲストハウス(簡易宿所)として運用する決意をしたといいます。

 今回、モデルツアーを企画した背景にも、ツアーを通して網代の魅力を伝えたいという思いがあるそうです。参加者の意見や反応を今後の宿づくりに生かしていきたいという狙いもありました。

網代を満喫するワーケーションモデルツアーのプログラム

 ワーケーションモデルツアーは、昨年12月15日・16日の2日間にわたって行われました。参加したのは、都内などの企業で広報を担当する女性6人。「網代の風」に宿泊し、網代でアクティビティーやグルメを楽しみながらワーケーションプランなどを考えるワークショップに取り組みました。

<モデルツアースケジュール>

1日目

13時30分  網代駅到着、周辺を散策しながら移動

14時   老舗削り節製造業「丸藤」の工場見学、直営店で食事

16時30分  ゲストハウス「網代の風」でワークショップガイダンス

18時   日帰り温泉「大成館」

19時   居酒屋「キッチンますます」で食事

21時   「網代の風」でワークショップ

2日目

10時   海上釣り堀「東海」で釣り体験

11時30分 「笑ぎょ」で食事

12時30分 「網代の風」でワークショップ、プレゼンテーション

14時   チェックアウト、解散

老舗削り節製造業「丸藤」で工場見学

 1926(昭和元)年創業の老舗削り節製造業「丸藤」が昨年7月に開業した飲食店「BUSHI MESHI(ブシメシ)」では、藤田昌弘社長の話を聞きながら、削りたてのかつお節を丼に山盛りにのせたご飯や網代港で水揚げされた鮮魚の刺し身を味わいました。目の前の機械から出てくるかつお節をご飯にのせる体験もしました。

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丸藤の藤田社長からかつお節についてレクチャー

 食事を終えた参加者は、衛生用の白衣や帽子を身に着けて工場見学に臨みました。同社は、焼津や鹿児島から仕入れた原料を加工してかつお節に仕上げています。原料選びや加工の工程に独自のこだわりがあり、都内の名だたる和食店やホテルの料理人が丸藤の削り節を使っているそうです。

工場見学でかつお節の加工について学ぶ参加者

日帰り温泉と居酒屋で「網代ローカル」を堪能

 網代の町並みを眺めたり、創業150年の和菓子店「間瀬」本店に立ち寄ったりと、ゆっくりとした時間が流れる網代の集落を散策した一行は、宿泊する「網代の風」にチェックイン。小浦さんから館内の利用方法やワークショップのガイダンスを受けました。

 その後、希望者は「網代の風」から徒歩8分ほどの旅館「大成館」が提供している日帰り温泉に。自家源泉のかけ流しの温泉で体を温めた参加者は、網代駅近くに11月に開業したばかりの「キッチンますます」に移動して食事を楽しみました。

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 30年以上の料理人としての経験を持つ店主の増田高幸さん・亜沙美さん夫婦が開業した同店。食事する場所が少ない網代に貢献したいと出店し、オープンからまだ1カ月にもかかわらず連日多くの人が来店する人気店になっているそうです。この日もカウンター席は常連客と観光客で埋まり、会話が弾んでいました。参加者は、網代産ミカンの生搾りサワーを味わいながら増田さん夫婦との交流も楽しみました。ローカルな飲食店で地元の人や他の観光客と交流できることも、熱海・網代でのワーケーションの魅力の一つでしょう。

網代産ミカンで搾りたてサワーを味わう

初めての釣り体験でタイやアジなど大漁ゲット

 2日目は、「網代の風」の前にある網代港に併設する釣り堀「東海」で釣り体験にチャレンジした参加者。海上釣り堀ということで寒さが心配されましたが、12月とは思えない暖かさで釣りを満喫していました。ほとんどの参加者は釣り自体が初めてでしたが、お互いに釣れた魚を網ですくったり、魚の口から針を外したりと、協力し合っている姿が見られました。

アジを釣り上げる参加者

釣り上げた大きなタイに笑顔

 1時間で6人が釣り上げた魚は、アジ18匹、タイ8匹。上々の釣果に満悦の一行でした。釣り上げた魚は、隣接する「010 STATION FISH」に持ち込み、その場でさばいて急速冷凍した上で、それぞれの自宅に配送してもらいました。

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網代の知られていない魅力を、ワーケーションを通して体験・発信へ

 「網代の風」に戻った一行は、網代をワーケーションでPRする企画案をプレゼンテーションしました。2日間を網代で過ごした参加者からは、網代の印象について、「人が温かい」「レトロな港町」「夜景がきれい」「お酒のつまみが多い町」というポジティブな感想が出た一方で、せっかくの魅力が知られていないのでは、という提言もありました。

 具体的な企画案としては、「地域の高齢者が若者や外国人観光客に地元の食材を使った日本料理を教える」「斎藤市長も一緒に飲み歩きイベント」「将来独立を考えている若者向けに空き店舗を活用した平日お試し起業」「網代の郷土料理の試食会を開催してメディアやインフルエンサーを招待」など、網代の魅力を生かしたアイデアを発表しました。今後、ワーケーションプランを検討していく「網代の風」の小浦さんは「釣りや工場見学など、網代ならではのアクティビティーのほか、地域に貢献できるプログラムを開発していきたい」と話していました。

網代でのワーケーション企画を発表する参加者

ワーケーションモデルツアー参加者の感想

 2日間にわたって行われた「網代ワーケーションモデルツアー」。6人の参加者から感想を伺いました。

豊嶋果以さん(SPLYZA=IT事業、広報)

「実際の仕事で、自治体を含めたアイデアを考えることが増えており、今回のワーケーションを通して広報仲間や地元の人との触れ合いや対話から、アイデアの出し方や目の付け所、考え方などを学べました。網代は人の温かさや町のレトロな雰囲気、景色のきれいさなどが魅力。もっと生かして伝えられる可能性を感じました。釣りなどのアクティビティーがあふれていることも印象的です」

小西佳那さん(コンサルティング事業、広報)

「日常では感じられない人の温かさを感じました。町が静かなので仕事にも集中でき、休暇としてもリフレッシュできそう。初めての釣りでしたが、漁師のスタッフさんが親切にサポートしてくれたおかげでたくさん釣ることができてうれしかったです。魚をさばいてもらう場所が近くにあるのも便利で良かったです」

絹巻玲奈さん(トレンド・プロ=広告・出版業、広報)

「網代は初めて訪れましたが、懐かしさを感じる故郷のような町でした。普段の生活では海を見ることができないのですが、海が見えるだけで発想が柔軟になったり、集中できたりして、仕事にも良い面があると思いました。特に釣り体験が印象的で、魚の引きが想像以上だったので生命の力を感じました」

志村織帆さん(ブロードマインド=金融業、広報)

「ワーケーションとしては、東京ではできないようなアクティビティーを挟んでリフレッシュしながら、気持ちを切り替えて仕事に集中できる環境がありました。これから町が盛り上がっていくことを期待させられるような、余白を楽しめるエリアだと思いました。丸藤の藤田社長の話が印象的で、取引先やお客さまなどみんながハッピーになれるように仕事をしているプロフェッショナルさを感じました」

佐藤さくらさん(Cake.jp=小売業、広報)

「網代は静かで過ごしやすく、大人がゆっくりと楽しめる町だと感じました。落ち着いた雰囲気で癒やしを感じられるような場所なので、ワーケーションには合うのではないかと思います。いつでも気兼ねなく訪れることができる第二の故郷のような温かな場所です。特に日帰り入浴で利用した温泉が素敵でした。お湯の良さと旅館スタッフとの交流が印象に残りました」

橋本岬さん(フリーランス=マスコミ、ライター)

「熱海は有名な場所しか行ったことがなく、初めて網代を訪れました。徒歩圏内に温泉や釣りなどの観光スポット、おいしい飲食店があるので気軽に訪れやすいと思いました。静かでのどかな町並みは、忙しいビジネスパーソンの癒やしになりそう。一番楽しかったのは釣りで、たくさん釣れるように漁師さんがアシストしてくれたのも良い思い出です。自宅に郵送してもらった魚は驚くほどおいしかったです」

ゲストハウス「網代の風」について

 ゲストハウス「網代の風」は、一棟貸しの宿泊施設です。3階建ての建物に2~4人向けの洋室の寝室が5部屋、ダイニングキッチン、コミュニティールーム、風呂場、シャワー室などを備えています。長期滞在に便利な洗濯機・乾燥機があり、土間には3台分の自転車ラック、ガーデンシンクも。海を眺めながらバーベキューを楽しめるルーフバルコニーもあります。キッチンには、冷蔵冷凍庫、電子レンジ、炊飯ジャー、コーヒーメーカー、ホットプレートなどを備えているため、地元の食材を買って来て自分たちで楽しく自炊することも可能。

 今回ワークショップに使ったコミュニティールームには、7~8人程度で囲める大きなテーブルと椅子が備わっているほか、大型モニターやWi-Fiもあり、会議、研修、オフ会などグループ利用にも便利です。近くに無料で使える専用駐車場が3台分あるため、車で旅行やワーケーションに訪れる人にも親切です。宿泊料金は1棟貸し1泊4万円~。定員は13人。

ゲストハウス「熱海・網代の風」

住所 熱海市網代67

リンク

網代沖にかかった虹

網代港で取れたイカの活き造り

 

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