平安時代から伝わるといわれる料理の儀式「包丁式」が10月20日、今宮神社(熱海市桜町)例大祭で行われた。
包丁式は、右手の包丁と左手のまな箸を使い、食材に直接手を触れずに魚をさばく伝統的な儀式。今宮神社例大祭では初めて執り行われた。
当日は、四條真流会本部師範で、「エレコム熱海倶楽部」(伊豆山)の料理長・岸本隆志さんが刀主を務めた。一般に食材はコイを使うが、今宮神社に祭られている事代主神にあやかってマダイを使ったという。「兜(かぶと)乃鯛」と題し、水引の前立てとさばき終えたタイで、武将などがかぶるかぶとに見立てた造形をまな板の上に作り上げた。
儀式を見学した人は、調理前に包丁とまな箸で何度も空を切る所作や巧みに操りながらタイをさばく姿を真剣なまなざしで見つめ、儀式が終わると大きな拍手を送った。
四條真流会本部一門で、魚を運び並べるまな三方を務めた「YOFUKASHI」(西山町)の料理長・阿古賢太朗さんは「刀主を務めるにはたくさんの稽古が必要。門人の高齢化や料理人不足などもあり、儀式の継続が課題となっている。今回は熱海近郊の有志で執り行うことができた。儀式を奉納した神様への感謝や五穀豊穣の願いを胸に、後世に伝える活動を続けていきたい」と話す。