観光地・熱海にスイーツ店が立て続けにオープンしている。京都で行列が絶えないという「和栗専門 紗織」が開発支援した和栗モンブラン専門店や「熱海プリン」の系列となるチーズケーキ専門店など、個性的なスイーツ店が熱海に登場している。

テークアウトにも対応する「和栗菓子kiito－生糸－」

　熱海銀座商店街に3月2日、和栗モンブラン専門店「和栗菓子kiito－生糸－」（熱海市銀座町）が開業した。特注の絞り機で約1ミリの錦糸状にモンブランペーストを絞って提供する。京都の人気店「紗織」がレシピ提供するなどして全面協力するが、原材料には静岡産の果物を使ったり、静岡茶と合わせたりして、オリジナリティーを追求する。経営は、熱海の老舗温泉宿「古屋旅館」（東海岸町）の内田宗一郎社長が設立した「モデストスマイル」（銀座町）。開店初日、朝8時前には客が並び始め、開店時刻の10時には約70人の待ち人数になったという。2日目以降も開店を待ちわびる客が多数詰め掛け、現在は「予定を上回る販売となり、安定供給ができなくなる可能性が出てきたため、一部販売を制限することにした」という。新型コロナウイルス感染対策として、行列を防ぐため「整理券システム」を導入。自分の順番が近付くとメールで案内が届くため、行列で密になることを防ぎ、客は順番まで街の散策を楽しむこともできる。「大人が熱海時間を過ごすカフェを目指す」という。

　3月20日には熱海駅前にチーズケーキファクトリー「熱海ミルチーズ」（田原本町）がグランドオープンする。経営は、「熱海プリン」などを運営する「フジノネ」（下多賀）。同社は、熱海駅前の「熱海プリン」と「熱海ミルチーズ」の間で「いちごBon Bon BERRY ATAMI HOUSE.」も経営しており、同社経営の3店舗がスイーツエリアを形成することとなる。「生糸」がオープンした熱海銀座商店街には、銭湯をモチーフにした「熱海プリンカフェ2nd」があり、同店でも先月27日から、プリンの上にモンブランペースト絞ってのせた「FUJISANモンブラン」を販売するなど、新商品の開発にも積極的に取り組んでいる。

　これ以外にも、渚町エリアや熱海駅前などに新たなスイーツ店の出店計画もある模様。県外の企業が熱海に出店するのではなく、いずれも市内や近隣の企業が経営しているのが特徴。今月7日で1周年を迎えたフルーツサンド専門店「熱海フルーツキング」（渚町）は伊東市の伊豆高原ビールが経営する。熱海駅前の平和通り名店街に2年前から店を構える「熱海スクエアシュークリーム」は四角い形のシュークリームが特徴で、度々メディアでも紹介される。経営は三島市の北海物産で、シュークリームには地元の原材料を使う。加えて、熱海の老舗の和洋菓子店・喫茶店が提供する個性的なスイーツにも、「昭和レトロブーム」を追い風に注目が集まる。純喫茶「パインツリー」（銀座町）が提供するフルーツポンチやフルーツパフェは「映えスイーツ」として、SNSに頻繁に登場。ホテルニューアカオ系列のカフェ「花の妖精」（熱海）は、相模湾を望む絶景を眺めながら楽しむ、季節の果物をふんだんに使ったカラフルなパフェが人気となっている。

　「熱海プリン」は、地元の企業とのコラボスイーツにも積極的に取り組む。市内の老舗洋菓子店「住吉屋」（渚町）とコラボし、3年前に期間限定で販売したクリームパンとプリンを融合した「プリームパン」が好評で、現在は曜日を限定しながら定期的に販売している。3月10日からは、「アカオハーブ＆ローズガーデン」とコラボした「ローズプリン」を通販限定で販売する。

　熱海商工会議所の石井裕隆さんは「これまで空きビルだったところにスイーツ店が出店し、空き物件の活用につながっている。以前は熱海が集客できていなかった若い層の観光客を集めることに貢献している」と、スイーツ店出店による街への効果を説明する。一方、今後は一度熱海を訪れた観光客に再訪してもらえるまちづくりが大切だという。「若い観光客が行く店だけでなく、大人も満足するスイーツ店ができ、幅広い層の観光客が楽しめる街になっていけば」とも。「『熱海らしさ』『老舗らしさ』を生かしつつ、時代に合わせた改善も大事なので、そこをサポートしていく役割を担いたい。新しい店ができることによって、昔からある地元の店もさらに発展していくきっかけにしてほしい」と期待を込める。