熱海で3月23日、「スマートヘルスツーリズム」のモニターツアーが開催された。主催は竹屋旅館(静岡市清水区)。観光客が増加する熱海において、誘客の新しい切り口となるかに注目が集まる。
同ツアーは、観光、健康、ITを組み合わせた「スマートヘルスツーリズム」を提唱する竹屋旅館が、その認知度向上と実証実験を目的に行った。県内から男女8人が参加し、同社が提供するプログラムに臨んだ。ヘルスツーリズムは、地域の健康資源を活用した旅行を意味する。同社は数年前から自社が運営する宿泊施設で、健康を意識した食事の提供やウオーキングなどのアクティビティーを提供してきた。そこに、体にどのような変化があるかを計測するスマートデバイスを加えたのがスマートヘルスツーリズムだという。同社の竹内佑騎社長は「昔のヘルスツーリズムは、健康のために我慢するなど、つらそうなイメージが強かったために広がらなかった。大切なことは、楽しみながらできることと、日常生活につながること。地域の観光資源を生かすことを大切にした」と説明する。
熱海での開催に至ったのは、健康食を提供する和食店「釜つる」(熱海市銀座町)がきっかけ。同店の調理長が、竹屋旅館のグループ機関が発行する「メディシェフ」の資格を取得。地元の食材を使いながら、カロリーや塩分を抑えた「健康御膳」を新たに開発して提供を始める。今回のプログラムでは、参加者はこの「健康御膳」を試食。健康データを計測するスマートデバイスを装着し、市内中心部の街歩きツアーや熱海サンビーチでのヨガなどのアクティビティーを一日掛けて楽しんだ。街歩きには、ゲストハウス「MARUYA」(銀座町)がガイドとして協力した。
ツアーに参加した岡田良寛さんは「30歳を過ぎて疲れやすくなったが、普段から健康は意識するようにしている。できる限り野菜中心で、量も食べ過ぎないように。熱海はまだ健康をテーマにした飲食店は少ない。このようなアクティビティーや健康的な食事をできる店が増えていけば、今後の熱海にとっても良いことだと思う」と期待を寄せる。同じく参加した熱海高校職員の福田千恵さんは、メディシェフの資格を取得したという。「普段からスマートデバイスを身に付けて、健康に気を付けている。仕事にも生かすため、メディシェフを取得し、今後は授業にもプログラムで学んだことを導入していけたら。地域の生産者や事業者との連携にもつなげていきたい」と話す。
ツアー終了後には、スマートデバイスで計測した数値から体への効果を確認した。竹内社長は「データが蓄積してくれば、それぞれのお客さまに合った食事を提案していけるようにもなる。まだ始まったばかりの取り組み。今後は、魅力的な観光資源が多い熱海や伊豆エリアでも、地域の事業者と一緒にスマートヘルスツーリズムを展開していき、観光地の価値を高めていきたい」と意気込みを見せる。