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熱海のジャズ喫茶「ゆしま」の現役ママが100歳に 「いい音楽が健康の秘訣」

カウンターの椅子で客を迎えるママの土屋行子さん

カウンターの椅子で客を迎えるママの土屋行子さん

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 ジャズ喫茶「ゆしま」(熱海市中央町)のママ・土屋行子さんが3月18日、100歳を迎えた。ジャズに合わせて静かに体を揺らすママの姿は、音楽に身を委ねてきた人生をありのままに表現している。

店内にはジャズシンガーのサインやコンサートの半券が飾られる

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 1921(大正10)年生まれの土屋さんは東京・赤坂の出身。実家は赤坂で自転車やオートバイなど輸送車両の販売業を営んでいた。疎開で熱海にいたことがあり、気に入った熱海に戦後になって移住し、喫茶店を開業した。東京の湯島天神近くの別邸に住んでいたこともあったため、「ゆしま」というなじみのある地名を店名にしたという。開業した1952(昭和27)年当時は、熱海大火の復興期。「既にここしか土地が空いていなかった。狭い土地だったが、繁盛して、人も使いながらやっていた」と土屋さんの息子が話す。4年前までは土屋さんが一人で店に立っていたが、現在は息子と一緒に店を切り盛りする。

 当初はBGMとしてジャズを流す「純喫茶」だったが、1966(昭和41)年に「ジャズ喫茶 ゆしま」に改称した。「まだ日本でジャズが普及する前。熱海ではもちろんジャズ喫茶は初めて。国内でもまだ珍しい存在だった。レコードのコレクションが増え、バンドマンのたまり場になっていった」。そのころ、市内にはソロからビッグバンドまでホテルのバンドマンが200人~300人おり、店には彼らが集まり「常にバンドマンでいっぱいだった」という。収集したレコードやCDは約5000枚。「多彩なバンドマンが来たから、ジャズといっても間口の広いオールジャンルのジャズを流してきた」と話す。店内には、チック・コリアやソニー・ロリンズのサイン色紙も並ぶ。「バンドマンは店で流れる音楽を真剣に聴いている。だから良いサウンドを聴かせたい」と、レコードは原盤をそろえ、スピーカーも年代物のJBL製にこだわる。

 「ジャズ喫茶は、今では静岡県内から横浜市までの間では、恐らく当店だけ」。地元客と観光客で半々くらいだが、全国からわざわざ同店を訪れる客も少なくないという。市内から通う常連客は「20代の時から50年以上、通っている。ママが若かったころから。今では週に2、3回。ここなら好きな音楽を大音量で聴けるし、聴きたい音楽をそろえてくれている」と笑顔で話す。

 健康の秘訣(ひけつ)は「ここでいい音楽を聴くことと、お客さまと話すこと」とほほ笑む土屋さん。「元気なうちは一緒にやっていきたい」と、親子で今日も客を迎える。

 営業時間は12時~19時(現在は17時ごろまで)。日曜定休。

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