熱海特産のかんきつ類「ダイダイ」の6次産業化を進めるシトライカンパニー(熱海市西熱海町1)がこのほど、新たに開発した「だいだい精油」の製造・販売を始めた。
同社代表の岡野谷伸一郎さんは、一昨年にダイダイの栽培を畑の地主から継承。栽培・出荷に加え、6次産業化により、「ダイダイマーマレード」、「ダイダイぽん酢」などの食品に加工するプロジェクトを進めてきた。精油の開発について岡野谷さんは「ダイダイは正月のお飾りに使われる程度で、価値があまり高くなかった。熱海は日本を代表するダイダイの産地でありながらも、年々、栽培する農家が減り、耕作放棄地も増えている。新しい発想で付加価値を付けることによりダイダイの価値を高め、次世代につなげていける商品を開発したかった」と振り返る。「ダイダイを出荷するとき車内がダイダイの良い香りでいっぱいになった」という経験が、開発のヒントになったとも。
開発に当たり、精油を製造する機器や製造方法などを研究。一般的にかんきつ系の精油は、果実の皮を絞って抽出する「圧搾法」を取ることが多いが、今回のダイダイ精油の抽出には「水蒸気蒸留法」を採用した。岡野谷さんは「水蒸気蒸留法にすることで、精油を用いた肌が紫外線のダメージを受ける『光毒性』の成分を除去できるとされ、利用方法が広がる」と説明する。
精油の抽出には、ダイダイの皮の部分を使う。これまで実の部分は食品や果汁として使ってきたが、余った皮はほとんどを廃棄していた。「皮の香りやその価値を感じてほしい」と岡野谷さん。蒸留で使用する水も、ダイダイを栽培する山から湧く水を使う。「熱海で育ったダイダイを、ダイダイを育てる湧き水で、ダイダイ農家が蒸留する。純熱海産の精油としてアピールしたい」と岡野谷さんは意気込む。
現在、「純熱海産 だいだい精油」(2,750円)を、ホテル「ザ グラン リゾート エレガンテ熱海」(桃山町)、天神酒店(咲見町)、アカオハーブ&ローズガーデン(上多賀)、リラクゼーション&エステ「はれの癒」(田原本町)で販売している。「はれの癒」では、店内のアロマディフューザーや施術にも使う。
今後について、岡野谷さんは「まだ生産能力が低く、たくさん製造することができないので、設備を増強していきたい。精油をワークショップで使いたいという要望や、宿泊施設などがオリジナルのブレンドアロマを作りたいという声もある。香りの良さを実感してもらい、ダイダイの価値がさらに高まっていけば」と期待を込める。