熱海駅前・仲見世商店街の温泉まんじゅう店「丹那屋」が12月1日、約3カ月の休業を経て営業を再開した。
東海道線の熱海・函南駅間の丹那トンネルが開通した1934(昭和9)年12月1日に創業した同店。今年8月、観光客の運転するレンタカーが同店正面に衝突する事故が発生した。幸い従業員や客に怪我はなく、人的被害は免れたが、店舗入り口や商品のショーケースが全損。温泉まんじゅうを製造する機械や器具などの一部も破損し、休業せざるを得ない状況に陥った。
当時の状況について、4代目店主の磯聖幸さんは「当店だけではないがコロナの影響で苦しい中、さらに事故で営業できなくなった。精神的につらい日々が続いた」と振り返る。「それでも地元の人や商店街の仲間に励まされ、やれることを前向きに頑張ろうという気持ちで再起した」と話す。
店舗の復旧や復旧に合わせて行ったリニューアルでは、保険金でまかなわれなかった費用を自己資金で負担。工事の間にはできることをやろうと店頭で、試しに串焼き団子を販売した。炭火で焼いた団子に温泉まんじゅうに使う北海道産小豆の自家製あんをのせたところ、土曜・日曜を中心に多くの客が買い求めてくれたという。
約3カ月間休業し、店内のリニューアルと温泉まんじゅうの販売準備が整った12月1日、通常営業を再開した。創業から変わらず手作りで昔ながらのせいろ蒸しにこだわるという温泉まんじゅうは健在。好評だった串焼き団子の販売継続も決めた。休業中に開発した新商品「熱海温泉まんじゅう天ぷら」(2個=500円)も1月31日までの期間限定で販売する。天ぷらは、2度蒸しした温泉まんじゅうに衣を付けて揚げ、塩をかけて提供。磯さんは「周りはサクッと、中はふわっとした食感を楽しめる」と胸を張る。
営業再開に当たり、50年近くの間、倉庫の奥にしまいっぱなしだったというと黒漆地に金箔(きんぱく)の文字で「仲見世通り 丹那屋」と書かれた看板を真新しくリニューアルした店内の壁に掲げた。磯さんは「創業以降に製作された由緒正しい看板」と説明。「熱海はコロナや災害でみんな苦しんだが、お互いに声を掛け合ってがんばっていきたい。ひとまず当店も再開できたので、前向きな気持ちで商いを続けていきたい」と表情を引き締めた。
営業時間は9時~17時(日により変動)。