熱海出身・在住の日本画家・坂本武典さんがラベルをデザインした純米酒「天虹」がこのほど、完成した。
「天虹」は、駿河酒造場(静岡市)が製造する日本酒。同社の専務で杜氏(とうじ)の萩原大吾さんが高校時代の同級生だった縁で坂本さんは、10年以上前から新春干支(えと)ラベルのデザインを任されている。
今年のラベルは、干支の寅(とら)が伊豆山の高台から初島と日の出を望む様子を描いた。坂本さんは「伊豆山への思いを込めて描いた」と話す。7月3日に発生した伊豆山の土石流災害は、長年熱海で育ち創作活動をしてきた坂本さんにとっても心が痛む出来事だったという。「発災直後、現場付近から海の方向を眺めたときに目に映った初島が印象的だった」と言い、「大変なときでも前を向いて進みたいという寅を表現した」と説明する。
初島を望む寅は、鋭い眼光と穏やかな表情を併せ持った様子を描き、「初にらみ寅図」と題した。歌舞伎の「にらみ」と重ね合わせ、不動明王からにらまれることで無病息災で過ごせるという思いを絵にのせた。「穏やかな年であってほしい」と、吼えていかつい表情ではなく、あえて穏やかな表情の寅の姿を描いた。
絵には、コロナ禍で厳しい経営環境にあった酒販店や醸造場への応援の気持ちも込めたという。昨年末には伊豆山復興支援のための熱海市への寄付や復旧活動をする熱海警察署員への激励を行うなど、支援活動を続けている坂本さんは「昨年はコロナや災害があり、熱海は大変だったので少しずつ盛り上がっていってほしい。自分は穏やかに、できることを続けていきたい」と話した。