熱海に合宿所「yutorie(ユトリエ)」(熱海市西山町)が3月22日、グランドオープンした。
企業の経営合宿や研修、セミナーなどに使うことができるスペースと宿泊設備を備えた同施設。空き家だった日本家屋2棟をリノベーションして開業にこぎ着けた。
同施設を経営するデザイナーの近藤尚さんは、都内を拠点に内装設計やデザインを手がけてきた。6年程前に熱海で開かれていた創業支援プログラムをきっかけに熱海の事業者と接点を持ち、市内の宿泊施設や飲食店のロゴデザイン、ホームページ制作、ブランディングなどを手がけた。
今回オープンした同施設の建物は、近藤さんの妻・鈴木夢乃さんの祖父が別荘として使っていたという。しばらく空き家だった建物を有効活用しようと構想を固め、2021年6月に夫婦で熱海に移住して開業の準備を進めた。
合宿所として開業した経緯について、近藤さんは「祖父が休みの度にここで温泉に入りながら絵を描いていた。観光やバケーションで利用するというよりも、経営者やクリエーターが創造的な作業で新しいことを生み出すような場所になればと考えた」と説明する。
2棟の建物はいずれも築70年ほどの日本家屋で、合宿所の建物は「集中力を生み出してほしい」と、モルタルで建物の下半分を埋めたような外観に仕上げ、内装は天井や柱、家具などは元の木材の仕様をそのまま残した。
客室の建物は、外観は手を付けずほぼそのままの状態を生かし、4室の客室はそれぞれ異なる色調のデザインにリノベーションした。客室の家具や照明も近藤さんのオリジナルデザインにこだわった。室内の照明や空調は備え付けのタブレット端末で操作することができるなど先進的な仕様に。近藤さんは「日本家屋らしい直線的な構造や外観と、室内の曲線を多用した空間デザインとのギャップを感じてほしい」と話す。「このモルタルで囲まれた建物やデザインは自分にとっては作品でもある。自身にとっての代表作でありモデルルームの役割も果たす」とも。
食事は、併設する薬膳喫茶店で提供する中華がゆや熱海の干物を使ったさばサンド、市内の飲食店から取り寄せる料理などを提供する。
近藤さんは「熱海は観光客が多いが、この施設は観光目的ではない人に利用してもらいたい。最大で30時間使うことができるので、クリエーターなどが創造的作業に集中してもらえるような場所になれば。熱海に観光ではない流れを作りたい」と意気込む。
利用時間は11時~翌17時。利用料金は貸し切りで19万8,000円。定員6人。