シンポジウム「越境によって、人材・企業・地域に生まれた変容とは?」が10月13日、熱海市内で開かれた。主催は、まちづくり会社「machimori(マチモリ)」(熱海市銀座町)。
越境学習の機会を提供する「GeNSEn」を手がける「machimori」の市来広一郎社長(関連画像4枚)
企業研修を通した地域と企業の関わりや人材育成をテーマに掲げた同シンポジウム。同社がこれまで課題先進地といわれる熱海を企業研修の場として活用してきた取り組み内容や成果を共有した。市外から熱海で研修を受けた企業の担当者、研修を受け入れた熱海の事業者らが登壇。市内外から約40人が参加して熱心に耳を傾けた。
まちづくりに取り組む同社は2018(平成30)年から、熱海の地域課題をテーマにした「越境学習」での人材育成研修や地域共創事業に取り組む。2022年には、実戦型研修プログラムとして社会共創事業「GeNSEn(ゲンセン)」をスタートし、市外の企業を中心に研修の機会を提供してきた。同社の市来広一郎社長は「熱海の衰退を経験し、外の企業に頼っているだけでは駄目だということを実感した。地域、地域の事業者、企業がウィンウィンになれるような関係を目指す」と話す。
セッションの中で、環境活動を通した企業研修を提供する「未来創造部」(渚町)の枝広淳子社長は「研修の参加者に地域の課題を『ワガコト(我が事)』化してもらうことが大事。当事者意識を持ち、座学と現場体験を通して学習してもらう」と話す。
研修に参加した企業担当者は「越境学習が現在、企業で求められている背景として、新規事業を作るには社会課題の解決につながることが不可欠」とし、「研修参加者が、課題に対する意見や情報を外部から取り入れるようになった」と発表した。他の担当者は「頭の中で抱いていた熱海のイメージと実際の熱海には違いがあり、熱海の実情を熱海の人から、会議室ではないリアルな場で聞けることに価値があった」と振り返った。
実際に外部企業から研修の受講者を数カ月間受け入れた地域企業の経営者も登壇した。防災事業を手がける「ウェックス」(網代)の渡辺淳司社長は「研修参加者から地域課題の一つだった廃校の活用プランが上がった。その後、廃校活用の具体的な事業に展開している。普段自分たちでは気づかない外の視点で地域を見ることができた」と話す。伊豆山の復興支援に取り組むNPO法人「テンカラセン」(伊豆山)代表理事の高橋一美さんは「当初は参加者も被災地で何をしたらいいのか分からずに困っていたが、自分たちで考え、本来の仕事も忘れて目の前のミッションに集中していたのが印象的だった。外の人材を受け入れたことで、自分にとっても熱海・伊豆山の良さや課題を客観的に受け入れられるようになった。今後もこのような機会を提供してほしい」と話す。
machimoriは11月・12月にも、市内で企業研修プログラムを予定する。