熱海市役所近くの書店「芹沢百貨堂」(熱海市銀座町)が3月30日に閉店する。創業から5代にわたって営業してきた老舗がその歴史に幕を下ろす。
熱海市役所近くで商売を続けてきた「芹沢百貨堂」(関連画像4枚)
5代目店主・芹沢弘江さんによると、曽祖父の弘さんが洋服や菓子などを販売するよろず屋として創業した。「時期は定かではないが、明治30年より前には店があったと聞いているので、創業130年以上だと思う。今でいうコンビニのように日用雑貨を売る店だったとも聞いている」と話す。
1946(昭和21)年に法人化し、宝くじやタバコの販売を始めた。その後、弘江さんの祖父が本やレコードの取り扱いも始めたのが現在の書店から見ると原形になるという。当時を振り返り、弘江さんは「子どもの頃には、本やレコードのほか、プラモデルや文具も販売していた。祖父母は、教科書の販売を始めたり、外商に回ったりと、地元との縁を商売につなげてきた。代々が時代に合わせて商品を変えながら店を続けてきた」と話す。
4代目だった夫が亡くなり5代目として会社を引き継いだ弘江さんは、長らくスタッフとして店を支える主任・田代智子さんと二人三脚で、営業を続けてきた。「本の販売と併せて新しいことをしようと考えたこともあったが、20年ほど前に目の病気になった。特に最近は目が見えづらくなって仕事に支障が出てきてしまった。田代さんにおんぶに抱っこでやってきたが、これ以上続ける元気もなくなり、力尽きた」と話す。
一方で、閉店を知った客の思いも寄らぬ反応に驚くこともあるという。「閉店を伝えるとショックを受け肩を落として帰る常連客もいる。悲しんでくれるお客さまが多い」と田代さん。弘江さんは「こんなボロい本屋でどうしようもない店だと思っていたが、この店の個性を必要としてくれる人がいた。長い間、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べる。
今後、店舗は貸し出す予定という。「広くて使いづらい店だが、できれば熱海をもっと良くしたいという思いを持つ地元の事業者に借りてもらえればうれしい」と話す。