熱海初のクラフトジン蒸溜所「SEACLIFF(シークリフ) 熱海蒸溜所」(熱海市清水町)の開業準備が現在、熱海市指定有形文化財「起雲閣」(昭和町)近くで進められている。
同蒸溜所の開業を進めているのは、「シークリフ・スピリッツ」の釜谷道夫社長。熱海や伊豆の食材を使ったジンを作ろうとプロジェクトを立ち上げ、6月の蒸溜所開設を目標に奔走している。
釜谷社長は、20代でバーテンダーとして修業し、2004(平成16)年に独立して東京・西麻布にバー「SEVEN THREE(セブンスリー)」をオープンした。季節の果物を使ったフルーツカクテル、ハーブやスパイスを使ったオリジナルのボタニカルカクテルなどを提供。著名人も来店する「隠れ家バー」として人気を呼んだという。2018(平成30)年に閉店してからは、都内を中心にレストランなどを展開する会社のドリンクディレクションなどを手がけた。「その会社が事業展開するのをきっかけに熱海に縁ができた。バーテンダーとして国内外の蒸溜所やワイナリーを巡っていたこともあり、いつか自分で酒造りをしたいと思っていた。熱海や伊豆にはジンの材料となるボタニカルが豊富にあるので熱海に蒸溜所を作ることにした」と振り返る。
「3年ほど前から蒸溜所開設の計画をスタートしたが、困難の連続だった」と釜谷社長。当初開設を予定していた場所がさまざまな理由で開設できず、計画の変更を余儀なくされたという。「熱海で酒造りができるのかと悩んだ時期もあったが、行政や地元住民から応援してもらい、地域のために挑戦を続けてきた」と話す。起雲閣近くにある建物への出店がようやく決まり、バーを併設する蒸溜所の工事がスタートした。計画では、オリジナルジンの販売を2025年に開始する。
開設が延び延びになっていた3年間で、日本酒や焼酎の酒蔵で酒造りや蒸留技術を学んだり、北海道の蒸溜所でジンの蒸溜や試作などを行ってきたりと、準備を進めてきた釜谷社長。熱海や伊豆では生産者を回り、ジンに合う原材料を探したという。「オーガニックハーブや熱海の特産品・ダイダイ、希少な地元産のハバノリなどを使う。白浜神社に植わるビャクシンをキーボタニカルにする予定」と話す。
現在、設備や工事の資金を集めるためのクラウドファンディングを実施している。釜谷社長は「地域のフレーバーをジンにすることで、熱海や伊豆の魅力を多くの人に伝えたい。蒸溜所自体を新しい観光名所にできるような取り組みを進めていくので、応援してもらえれば」と力を込める。