熱海の森林保全に取り組むNPO法人「熱海キコリーズ」(熱海市昭和町)が5月12日、森林整備と森林浴フィールドを作るためのクラウドファンディング(CF)を始めた。
今回のプロジェクトは、民有林を整備して森林浴フィールド「ATAMI Green Field with Kicollys & Marie」を作るもの。山林に囲まれたフィールド内には、「海の見える森林浴ウッドデッキ」、メモリアルツリーエリア、アスレチックエリア、セラピーロードなどを設ける予定。CFでは、ウッドデッキスペースを整備するための資金を募る。集める資金の目標金額は250万円で、6月27日まで支援を受け付ける。
フィールドの場所は、JR熱海駅から車で15分ほどの山間部。頼朝ライン沿いにあるレストランカフェ「Marie’s Kitchen & Live Studio」の約60メートル下に位置する。民有林は同カフェ店主の小島和雄さんが所有し、現在はその一部のみを使っている。
熱海キコリーズは2016(平成28)年に活動を始め、2020年にNPOを設立した。メンバーは、ほかに本業を持つ「週末林業・複業キコリ」として、熱海の市有林や民有林の間伐による森林整備などに取り組む。代表の能勢友歌さんと小島さんとの出会いは4年前。熱海キコリーズの活動報告会に小島さんが参加したのがきっかけだったという。小島さんは「それからしばらく、キコリーズの活動を遠くから応援していた。当初はこの森を何かに生かそうと、自分たちで階段を作るなどしていた。気長にやっていこうと思っていたが、自分たちだけではどうにかできないので、能勢さんに相談した」という。
小島さんが所有する森林は約5000坪。熱海の市街地や相模湾を見渡す絶景のローケーションに同カフェを作ったが、それ以外の森林はほぼ手付かずの状態だった。能勢さんは「小島さんからこの森林エリアをどうしたいという夢を聞いた。森を人に開けた場所にしたいことや、記念樹を植えることで未来に続く森作りをしたいことなど、思いを形にできるように一緒にプランを考えていった」と振り返る。
現在、フィールド予定地の放置林を間伐し、間伐材の搬出経路の整備や搬出作業を行なっている。能勢さんは「間伐したことで、太陽の光や風が届くようになった。森を再生して、鳥や昆虫が集まり、生態系が循環することを目指したい」と話す。間伐したことにより、ウッドデッキを設置する場所は明るくなり、木と木の間から海を眺めることもできるようになったという。完成は10月を予定している。
当初は小島さんと熱海キコリーズで資金を出し合って作り上げる予定だったが、CFを活用することに決めた。能勢さんは「CFを使うことで、活動を多くの人に知ってもらうことと、このプロジェクトに関わってもらい、森に愛着を持って、一緒にこの森を育てていくことができればと思った。作る過程も一緒に楽しむことができたら」と期待を込める。「市内にはたくさんの放置林がある。民有林の放置林を持っている人に対して、今回のプロジェクトが一つのモデルケースなれば。こんな活用方法もあることを知ってもらい、希望につながれば」とも。
CFのリターンには、ピクニックドリンク券、熱海のジビエ肉セット、DIY用間伐材板材、グループでキコリ体験などを用意し、500円から参加できる。集まった資金はリターンに充当するほか、ウッドデッキ製作に当たっての工事費や整備費などに使う。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で協力を呼び掛ける。